2020,09,10, Thursday
四国電力元会長、四国経済連合会の会長、そして公益財団法人オイスカ四国支部の初代支部長と、輝かしい人生を生きてこられた佐藤忠義様が、5日午前0時50分老衰のため京都市内の親戚宅で死去されたと報道されています。80歳にして杖もつかず、かくしゃくと登壇される姿に、「自分も将来こうありたい」と願った御仁であります。
最初のきっかけは、1983年頃第一生命高松ビルで行われていた『佐藤さんを囲む勉強会』でした。若い経営者を集め、90分程度のレクチャーを毎月して下さっていました。その頃は高松栗林ライオンズクラブの事務所も例会場もこのビルで、当時第一ビルの管理運営をされていた西野泰司氏が音頭取り役でした。ランダムに集められた生徒の中には、今ではよく知られた経営者もいらっしゃいます。 そして佐藤忠義顧問が93年公益財団法人オイスカ四国支部を発足され、初代会長として活躍されました。もちろん私がオイスカに入会する遙か前であります。「余生はオイスカにささげます」と話すほど、国際協力活動に情熱を傾けられた。95年からはじまったインドネシア植林活動には毎年足を運び、汗を流し、現地の子どもらとの交流をされたと聞いています。 ご自身がインドネシアで終戦を迎えたという縁もあって、東南アジア、とりわけインドネシアには熱心でした。晩年オイスカ四国のつどいなどでお目にかかると、『頑張りなさい』と一声ありました。101歳の昨年も、二代目支部長の坂出商工会議所の石井淑雄会頭の運転で、オイスカイベントに駆けつけて下さっていました。 杖を持たないのは、日頃アスレチックジムでの鍛錬がありました。高松でもジムがまだない頃、「アナブキ」のジムに熱心に通われていました。『郷ひろみ』が来ていたと、聞いたことがあります。85年に藍綬褒章、94年には勲一等瑞宝賞を受賞されています。失礼極まりない私は、佐藤忠義顧問にお聞きしました。「勲一等は最高位、電力でも東京とか関西電力のような大きいところに授与されるのでありませんか」。「大きな所は、事故や事件が多いのです」。そうではなく、人となりが受賞の理由だったと思いました。 佐藤忠義顧問とのエピソードは多くありますが、極めつけはコメンテーター竹村健一氏を囲む「香川竹村会」主催で、中国深圳などをご一緒したことです。確か1995(平成7)年の2月だったと思います。今の中国は、この頃はみじんも感じるところなく、深圳も開発がはじまったばかりで、まだまだ田舎でした。佐藤忠義顧問の声かけか、三菱商事とか日本からのそうそうたる出先機関の代表がホテルへ集まり、かなり突っ込んだ会話をしていました。今なら即逮捕です。 先の『佐藤さんを囲む勉強会』でも、中国の話は良く出てきました。諸外国と日本の関係は、よく勉強されているなと感心しきり。「香川竹村会」は会費徴収がありましたが、『佐藤さんを囲む勉強会』は無償で開催されていました。長身で、背筋がぴんと伸びた立ち姿が印象的でした。ゴルフをしない私でも、スコアーが年齢を下回る「エージシュート」を何度も達成されたと聞いて、「さもありなむ」と思っていました。 大変な読書家で、『会長日記』もさりげなくお届けしました。後日お別れの会が開催されるようです。尽きることのない思い出が、大勢から語られることでしょう。ご冥福をお祈り申し上げます。ありがとうございました。 |
2020,09,09, Wednesday
地価というモノは摩訶不思議と言われるように、時価・公示価格・基準地価・相続税路線価・固定資産税路線価という『1物5価』が存在します。時価は問題ないと思いますが、『公示地価』とは、法令に基づき国家機関等により定期的に評価されている公的地価のうち、個別の地点、適正な価格が一般に公表されているもので、日本では『地価公示法』の『公示価格』を指します。毎年1月1日の価格が、7月末頃に発表されます。
『基準地価』とは各都道府県が発表する、毎年7月1日時点での土地の価格です。毎年9月20日ごろに、公示地価と同様1㎡あたりの価格が発表されます。日本の土地の価格は、公的機関の利用所有地を除き、プライベートな情報と解されていて、秘密扱いです。アメリカは特定の住宅の土地の広さや家の概要、売買価格からリフォーム代金、固定資産税まで公共の財産(情報)だとして公開しています。 日本では先書きのように、プライベートな情報扱いです。このため不動産鑑定士により、架空の土地の価格が鑑定されます。このようにしてつくられた土地価格が、先の二つです。この目的は、公共事業の土地買収時等に利用するために税金を使って鑑定されています。これも不動産売買現場では、利用される場合もあります。 これに対して『相続税路線価』は、文字通り『相続税課税のための価格』であります。時価の80%だとされています。時価だとすれば、今は時価より安い高いとなる恐れがあるため、時価の80%としています。平たく言えば、安く評価されているから納得して10ヶ月以内に現金で納付してねと税務署は言います。 さらに『固定資産税路線価』は、こちらも市町の『固定資産税課税』の目安です。時価の70%とされています。これら二つはいずれも課税のための数字ですから、八かけ七かけと控えめにしています。従って仮に固定資産税路線価が、1㎡が3万円だとします。3万円÷0.3025=9.9万円で、これが一坪当たりの金額です。これを70%で割り戻しします。すると坪当たり約14万円となり、今ではこれが時価に近いのでないかと考えられています。 ところが現実には、先の公的地価情報がある場所は、都会の幹線道路沿いの土地に限定されており、田舎の細い道路沿いには、公的価格の表示がありません。昨今は、「断捨離をして身軽になりたい」、「自分の目の黒いうちに処分をしておきたい」と希望する所有者が多くて、価格は安いのですが案件は増えています。 これらに対応するために、香川宅建では毎年12支部ごとに独自に『価格調査』をして、発表しています。これまでは調査結果を冊子にしていたのですが、近年では冊子プラス『電子地図落とし』をして、ビジュアル化しています。非常に分かりやすくなっています。データーも蓄積されていて、先人の恩恵を受けています。 高南支部は北は高松市多肥上下町、南は同塩江町まで、西へ延びると綾歌郡綾川町まで広がっています。土地勘のある人であれば、失礼ながら『あんな田舎』と言われるエリアも含んでいます。それだけ、ポイントの精査と新規ポイントが求められます。この作業が、年間事業計画の中でも最大の負荷がかかります。評議員全員で係りますが、直接担当の低田陽介さんご苦労様でした。 次の課題は、地図上にポイントを反映する作業です。今は10年間の地価が表示されますが、地図が敢えてプリントアウトできないように抑えています。先の個人情報保護の観点からです。「俺の家の価格を勝手に世間にさらすな」と言われかねない懸念で、残念です。不動産業者は、売却価格に意見を言う場合には、公的資料に基づき行うとされています。日頃の努力は、必ず実を結びます。 |
2020,09,07, Monday
後世の歴史家は、安倍政権時代を日本の新たな発展の土台を作った画期として評価するだろう。①外交機軸の再設定②デフレ脱却と経済成長軌道の設定③未完ではあるが行政、企業統治、働き方などの諸改革の三つが特筆される。近代日本の発展と挫折の結果は、世界の秩序を決めている『スーパーパワー』(私は覇権国力と考えるのだが)との関係性にある。
明治大正の繁栄は、日英同盟に基を置いていたから。第二次世界大戦での敗戦は、それに刃向かったことからである。戦後の発展と、挫折もまた同様である。1950年から90年バブル崩壊までの繁栄は、冷戦下の日米同盟に支えられた。バブル崩壊後の『失われた20年』と言われる時期の根本原因は、1991(平成3)年12月26日、ソ連ゴルバチョフ大統領の辞任で崩壊したソ連との、冷戦終結後安保体制の変質にある。 ソビエト連邦という共通の敵を失った後、米国は日本の強大な産業競争力を最大の脅威と考え、日本叩きに奔走した。しかし2012(平成24)年の安倍政権再登場により、日米軍事同盟が米中対決の下で新たな定義を与えられた。米中対決という新たな時代を予見し、地球儀を俯瞰する外交を展開して、日本のポジショニングを決めた指導者こそ安倍晋三首相である。 今では衆目が一致する中国の暴走を、世界主要国指導者の中で最も早くから指摘し、安保法制の改革により日米同盟を強化した。なぜ地政学的観点が重要かと言えば、それが経済の土台を決めるからである。かつてハイテク王国であった日本が韓国、中国、台湾の後塵を拝するようになったのは、米国の日本叩きによる結果であった。 日米関係の劇的好転が、日本の国際分業上の立場を大きく有利化し、日本経済を押し上げていったことは間違いがない。デフレを終わらせたのも、安倍晋三首相の業績である。日本の長期経済停滞の原因は、先の地政学的要因に加えて、誤った財政金融政策にあった。財務省の財政再建キャンペーンにほぼすべての学者、政治家、メディアが洗脳され、積極的マクロ政策の必要性を議論する雰囲気は消え、2009(平成21)年麻生太郎政権が衆議院選挙で大敗し、9月16日民主党政権になってそれは一段と強まった。 2000年代から続いていた日本病、デフレ進行、異常な低金利の意味するところは、需要不足と貯蓄余剰である。このデフレ政策が円高を加速し、日本の産業競争力は壊滅寸前であった。2012年12月26日に安倍政権が誕生し、このデフレ政策体系が初めて根本転換されたのです。大勢に抗し浜田宏一氏を内閣参与に迎え入れ、デフレ政策を批判していた黒田東彦氏を日銀総裁に迎え入れ、大胆な金融緩和、財政出動、改革を三本の矢とするアベノミクスを打ち出した。 後半安倍氏の意に反して、デフレの反撃により2度にわたる消費税増税、収入の範囲で支出をするという財政均衡路線回帰(プライマリー財政収支黒字目標)により経済と株価は息切れしたが、経済政策軸の大転換をたった一人で成し遂げた。安倍政権の7年半の間に、株価は就任時の9,7375円から2.4倍となり、コロナ危機のさなかですら、6月失業率2.8%と大幅な雇用増加を実現した。 アベノミクス第三の矢である諸改革も、着実に進展した。①働き方改革、女性参画、教育無償化②縦割り行政の是正、内閣人事局の創設、官邸主導、内閣の指導力発揮③コーポレートガバナンス(企業統治)改革、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、郵貯改革④法人税減税⑤TPP参加などいずれも安倍晋三首相の指導力で実現したモノであります。 9月6日(日)四国新聞・『武者陵司の経済の読み方』参照 |
2020,09,06, Sunday
前回の②前々回の①に書いた通り、安倍晋三首相の外交と安全保障では、後世に評価されるべき成果を上げたと思う。その中でも特筆されるのは、民主党の鳩山政権で傷ついた日米同盟を立て直し、強めたことだ。オバマ大統領との関係が絶好調になったその頃、2016年11月8日ドナルド・ジョン・トランプの大統領の当選を受けて直ちに訪米したのは『あっぱれ』だった。娘婿クシュナーと、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)絡みで、安倍晋三首相にトランプ氏が会った。もちろん大統領就任前のことだった。
側近らによると、在任中、安倍晋三首相が抱き続けてきたのは「日米同盟をもっと強めないと、日本の安定は保てない」という懸念だという。その事もあってか、安倍政権は『安全保障関連法』を定め、2016年3月に施行した。これにより日本は、米軍を支援するために、限定的ながら集団的自衛権を行使できるようになった。 トランプ大統領はつね日頃、「米国が日本を守るのに、日本が米国を守らないのは不公平だ」とも公言する。日本からの『思いやり予算』をもっと増やせという。「今は全駐留費の75%を日本が支払っている」と聞いて、トランプ大統領は驚いたとも言われているが、乱暴なトランプ節に過ぎず、真に受けなくても良いと考えるのは大間違いだと、最近何冊かの本を読んで私も反省した。 第一、米国は『世界の警察』ではないと宣言したのは、オバマ前大統領(民主党)であって、トランプ大統領(共和党)ではない。米大統領選で民主党のバイデン候補(民主党)が勝ったとしても、流れは変わらないだろう。背景には、「アメリカ議会」がついている。現職のトランプ大統領の言動に、アメリカ議会がお墨付きを与えている。『台湾旅行法』など法案で、アメリカの行く方向を指し示している。 安倍政権では防衛予算の減少にも歯止めをかけ、13~20年度に続けて増やし、自衛隊の能力を高めた。さらに2014年1月に『国家安全保障局』も設け、対外政策を素早く調整し、決められる体制をつくった。自衛隊内にも最近誕生した「サイバー対策室」、菅義偉官房長官は、省庁横断でデジタル化を進める権限を持つ「デジタル庁」を新設するという。 2001年の9.11事件勃発以降、アメリカは「対テロ戦争」の名目でアフガニスタンやイラクといった中東地域に軍事的に介入してきた。米国は約20年間、国内では空前の格差と分断に苦しむ。他国を守るより、まず国内再建だとの空気は米世論にも広がっている。世論調査では、アジア駐留軍を減らすべきだという人々が57.6%にのぼった。新型コロナウィルスによる被害が広がるなか、この傾向は更に強まっているだろう。 安倍晋三首相は日本がもっと防衛力を強める努力を尽くさなければ、米有権者はいずれ、日本の防衛義務を負うことに納得しなくなると考えた。日本がより多くの役割を担わないと、同盟があっても安定を保つのは難しい。新しいミサイル防衛網のあり方や自衛隊に反撃力を持たせる議論など、米側と直ちに擦り合わせる課題は沢山ある。 米国防総省は9月1日に発表した報告書で、中国海軍の水上艦・潜水艦は350隻に達し、米軍の293隻を抜いて「世界最大」になったことを認めた。中国は、地上配備の中距離ミサイルを千数百発に増やしたとされるが、米国はゼロだ。世論を二分し、支持率を下げてまで安倍晋三首相が『安保法』を制定したのは、このままでは将来、日米同盟が弱体化するか、瓦解しかねないと恐れたからだ。 むろん経済協力と対話を深め、中国とも安定した関係を築くことも大切だとして、安倍政権は17年以降、習近平国家主席の広域経済圏構想「一帯一路」に、条件付きで支持を表明。今年は習近平国家主席を、国賓で日本へ招くはずだった。コロナ禍が日本を救ったと観るべきかもしれない。その証拠に中国に尽くしても、中国による尖閣諸島への挑発や東・南シナ海での軍拡は続いている。 日本経済新聞9月5日(土)「安倍氏、恐れた同盟の悪夢」参照 |