先の私の書いた京都ルポ(ルポルタージュ)でも、観光業界が『GO
TO キャンペーン』で湧くなか、取り残されていた大型クルーズ船が、11月2日(月)から運航を再開した。多数の感染者を出した『クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」』を教訓に新型コロナウィルス対策を徹底し、待ちかねたファンたちから予約が相次ぐという。
記者が試験運行に同乗してみて、そこから3つの課題が見えてきたという。日本郵船傘下の郵船クルーズが運航する『飛鳥Ⅱ』が、10月19日(月)21日(水)に実施した試験航海で、何十回と耳にしたのは「表面温度異常なし」のフレーズだった。体温測定は、レストランや劇場など公共スペースに足を踏み入れるたびに体温を測定し、ルームキーをかざして入室を登録する。
これは面倒に感じるが、やっている者は2日目から慣れて不便も感じなかったという。乗客に安心感を与え、万一感染者が出た際には濃厚接触者を追跡しやすくなる。10カ月ぶりの航海に臨むクルーの、緊張感が船内に満ちる。背景には、外国籍クルーズ船で発生した集団感染の記憶がよみがえるからだ。
当然のことだが、クルーズ実施各社の対策は他の観光業界や交通機関に比べても厳しい。本格的な再開に向け、3つの課題が浮かび上がっている。1つ目は、PCR検査から乗船までのタイムラグだ。航海の1週間前、郵送で自宅にPCR検査キットが届く。唾液を採取し検査機関に送り返す。3日ほどで「低リスク」との結果が届いたが、検査後に全乗客が自宅待機するとは限らず、乗船までの期間に感染するリスクは残る。
2つ目は、乗船客が喜ぶような有力港への寄港が難しい点だ。クルーズ船は私も『飛鳥Ⅱ』に乗船した経験から容易に考えつくのだが、寄港後の移動はバス数十台を連ねてとなる。まだコロナの猛威が治まらないところに、大勢の観光客の殺到は避けたいのが本音だろう。特に沖縄県民は、医療機関の不足から「来てくれるな」と言わんばかり。
3つめは、新型コロナウィルス対策の3密が船内では出来ないことだ。しかし、それをやれという。知らない者同士が意気投合して時間を楽しむのが、クルーズの醍醐味の一つだ。だが現実は、一人で乗船した場合、基本的には食事もミュージカル観劇も一人だ。街中の飲食店と比べても厳しい。
私はクルーズ船の運行は、3~5年先の話だと考えていて、僅か10カ月程度での復活には逆に驚いた。『密』になることが楽しいのだから、真逆が動き出している。しかしコロナで死ぬ前に、経済(死活問題)で死んでしまう恐れがあるのがクルーズ運航だと思う。クルーズ船には千人からの乗船客が乗るが、働く人の総数はその倍はいるように思います。それだけ、この業界は死ぬか生きるか『知恵と工夫』がどうしても必要だと思います。