米大リーグ・マリナーズなどで活躍したイチロー氏(48)=現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が11,12日、高松市のレクザムスタジアムで高松商を指導。2日目となった12日は、主に打撃を指導。フリー打撃の実演では、「全力で振って、バテてからも形を崩さず振るのが大事」とアドバイスをしつつ、53スイングの途中、何度も意図を説明。
生きた手本だった。自ら打撃を実演して、逆風の中で4本の柵越えを披露。選手らは「えぐい」「(打球の軌道が)きれい」と大興奮だった。日米通算4367安打の技術を惜しみなく見せつけ、高商ナインを鼓舞した。約4時間の練習後は、「この時間をたまに思い出して」と自身の黒バットをプレゼント。
イチロー氏がプレゼントした黒バットが、高松商ナインの“お目付け役”だ。「この2日間の時間をたまに思い出してほしいので、ティーバッティングで使っていたバットを置いていきます。気合を入れたいときは、これを握ってもらっても構わないので。打っちゃダメだよ。握って。僕に見られている感じがするでしょ。
みんなのこと見てますから。監督(のことも)見てますよ」とユーモアたっぷりに話した。「また来るかも」と再訪も示唆した。2021年は国学院久我山、千葉明徳、高松商の3校を訪問。この日で、年内の指導を終えた。
今年最後のイチロー氏の高校球児訪問は、粋だった。イチロー氏が今年3校目の指導で高松商を訪れたのは理由がある。「今夏の甲子園、智弁和歌山との試合後の監督の発言がきっかけ」と明かした。敗戦直後、長尾監督は「(智弁和歌山は)イチローさんにも教えていただいて強くなったんだろうな、やる気が出たんだろうなと思うと、うちにも来てほしい」と熱望した。この日、同監督は発言を「智弁和歌山のような落ち着きと積み重ねたもの…。イチローさんが来たかどうかの差があったと思った」と説明した。
11日から濃密な2日間だった。ティー打撃の方向、走塁のリード姿勢。指揮官は、「1カ月の練習をした感じです」と感謝した。イチロー氏は最後に「みんな、レベルがとっても高い。センスがいい。期待してます。で、ずっとチェックしています。すごくいい雰囲気で、高松商業。応援したくなっちゃいました。多分、また、来るかもしれないですね」と伝えた。誇り、自信…。春夏2度ずつ甲子園を制している強豪校が、心をかき立てられる時間を過ごした。
イチローさんが来高するというニュースは、秘密裏に進められたようだ。選手にも学校にも、父兄にさえ知らされていなかった。それでいながら、県営球場の手配やマスコミの取材もあった。特に熱心な報道は、深夜1:15からのRSKテレビ『S・Iイチロー先生高校球児指導』。頭の10分程度を、この時間に割いていた。
私も父兄からこの番組を知らされて、朝録画で見ました。高商ナインも積極的にアドバイスを求めに行き、外野の守備でも「一端沈んでから動く」という極意を学び、イチロー先生も手応えを感じていたようです。『古豪復活』このところ少し足踏みをしていたようなところがありましたが、この指導がきっかけで、高松商が頑張ればおのずと県内高校野球力が上がることでしょう。