2022,01,10, Monday
『稲盛和夫の実学』をひもとく
Ⅰ採算の向上を支える【採算向上の原則】 京セラでは、人間関係を円滑に保つため、利益ではなく『時間当たり』を用いている。売上最大、経費最小で利益を叩き出し、その利益を部門別の全労働時間で割ることによって、その部門の時間当たり採算が計れる。京セラにおいて、この時間当たり採算と会社決算を結びつける役割を果たしているのが、『月次決算書』である。 時間当たり採算は、経営管理部門が作成し、月次決算報告は経理部門が作成し、時間当たり採算にはあらわれない人件費を費用として計上して利益計算をしている。要するに営業部門、製造部門のアメーバがばらばらにつくった時間当たり採算表に、少し手を加えたし合わせれば全社の損益計算書になるわけだ。 時間当たり採算表や月次決算の中の数字は、売上も経費もすべて、『一対一対応の原則』にもとづいて処理される。経営は経営者だけが行うモノではなく、末端の従業員にいたる者までが参加する『全員参加の経営』でなければならない。出来ることならば、全従業員に経営者の『魂』を注入することだ。 Ⅱ透明な経営を行う【ガラス張りの経営の法則】 心をベースにした経営、つまり社員との信頼関係を一番大事なものとして経営していくために重要なことが『透明な経営』。会社の現状を包み隠さず社員に知らせてあげるガラス張り経営が、一番大事なことだ。このことは、投資家へのIR(インベスターズ・リレーションズ)にもつながる。 自社のありのままの姿を包み隠さずオープンにするためには、利益よりも公正さを優先するという確固たる経営哲学が不可欠となる。人間として普遍的に正しいことを追求するという経営哲学がベースにあれば、それは『一対一対応』、『ガラス張りの経営』、『ダブルチェック』などの原則にもとづくきわめてシンプルでプリミティブなシステムで十分なのです。 しかし哲学や倫理観は、教養として知っているだけでは機能しない。しっかりと身につけて、日々の経営において実践出来るモノでなければならない。反省と自戒を繰り返しながら勉強していない限り、ついつい悪い方にのめり込んでしまう。それは、資本主義の病根だろう。 以上3回にわたって『稲盛和夫の実学』に関し、塾長が盛和塾で語ったことをまとめた機関誌から拾い読みしました。『実学』は書店で販売しています。興味のあった方は、是非読んでみて下さい。もう一つ書き忘れたことがあります。京セラでは総務や開発部門の費用は、各プロフィッツからの支払ではなく、預貯金金利や株の配当など、金融資産から得られる収入を充てています。なかなか直ぐに出来ることではありません。 |