2021,09,15, Wednesday
ブリジストン(タイヤ)は、2030年までに新たに販売する自動車用タイヤの9割を、電気自動車(EV)向けに切り替える。EV用タイヤは、従来型と比べて軽量で走行距離が伸びるのが特徴。まず欧州で従来型の生産設備をEV用に転換し、世界で50カ所ある工場の大半も順次改修する。タイヤは、低価格品で中韓勢が攻勢をかけており、付加価値の高いEV用で先手を打ち、自動車大手などの顧客を囲い込む目算のようだ。
EV用タイヤはゴムや部材の使用料が少なく、従来型に比べて2割軽い。走行時の抵抗も3割低く抑えられ、EVや燃料電池車(FCV)などの電動車の走行距離が伸びる。EVタイヤは欧州や米国、日本の既存工場で生産ラインを改修して生産する。まず年内に欧州でガソリン車向けの低価格帯ブランドの製造から撤退する方針で、その生産ラインをEV用に切り替える。 南米での生産も視野に入れており、世界に50カ所ある自動車用タイヤ工場の大半がEVタイヤ向けになる見込みだ。ラインの改修には一般的に、1工場当たり数百億円の投資が必要となる。23年12月期までの3年間で、タイヤ関連の事業に約3500億円を投じる計画だ。ここへ来て自動車業界は、車体フレームの共通化など、次々に新手を考えている。それだけ熾烈な戦いが、世界中で繰り広げられているのだろう。 EVは走行距離を伸ばすために大量の電池を積み込んでおり、ガソリン車よりも自重が重くなる。EVでガソリン車と同等の走行距離を確保するには、ガソリン車で車両の重量が1100㎏の場合、EVは約1.6倍になるという。ブリジストンは10年にガソリン車向けの低燃費タイヤを発売し、同社の乗用車用タイヤの8割まで普及が進んだ。 ただ『脱炭素』の世界的な動きを受けて、EVシフトが加速していることから、投資がかさんでも30年までに順次、新商品へ切り替えて行くことを決めた。タイヤは中国や韓国メーカーが台頭しており、低価格帯の商品を中心に、値下げ競争が激しくなっている。また自動車大手は、一斉にEVシフトを加速している。 ホンダが40年にガソリン車の販売をやめるほか、米ゼネラル・モーターズ(GM)や独メルセデスベンツなどの欧米勢も、こぞってEVのメーカーになることを打ち出している。何度も言うが、自動車産業界は利用者が多いだけに、競争も激しい。しかし考えてみれば、地球規模となれば、東南アジア進出という限定的な展開より、規模の利益も見込めるのではないだろうか。タイヤのゴム原料は、足りているのだろうか。 |