東京証券取引所は10月1日、上場する株式などの金融商品を終日売買停止とした。市場に、相場情報を伝えるシステム機器に障害が発生したため。問題が発生したコンピュータシステムは、『富士通製』で、基幹システムで基本的な情報などを格納する。東証は、装置内のメモリーなどを交換したうえで2日に取引を再開する。
全株式の売買が終日出来なくなるのは、1999(平成11)年に取引が人を介して売買する『場立ち』からコンピュータシステム取引に移行して以来、初めての事態であります。証券取引所がシステム障害で、終日取引出来なくなるのはシンガポール取引所などでは発生したが、先進国では異例だ。国際金融センター構想を東京が掲げても、インフラに不安を残すようではその道はおぼつかない。
東証はこの日、午前7時4分に相場情報を伝えるシステムを支える一部装置で故障が発生した。2つある装置の1つが故障し、バックアップ用の2台目システムへの切り替えも上手く行かなかった。証券会社のシステムダウンは、金融機関のそれと同様、被害は想像を絶するモノがあり、必ずバックアップされていて、イザの時にはこれが正常に機能するようにつくられているはずだ。
東証では通常、日本株売買3分の2を海外投資家が占めており、あわせて毎日約3兆円の取引がなされて、この売買機会が失われたことになります。日本での出来事が、世界へ影響を与えたことになります。外部からのサイバー攻撃の形跡は、見られないとしている。単なる故障事故のようだが、2連休明けのシステムダウンは、今後この業界らに深刻な影響を与えるだろう。
東証の取引停止を受け、東証と同じシステムを利用している名古屋、札幌、福岡の各証券取引所も取引を停止した。東証は13年に大阪取引所(旧大阪証券取引所)と経営統合し、大阪から上場企業約1100社を引き継いでいる。日本株の売買をほぼ独占し、上場企業の時価総額は世界3位となっている。
2010年にはシステムを刷新し、注文の処理速度を大幅に高速化。世界各市場で広がる超高速取引業者のニーズに対応出来るようにした。このように安定した収益を背景に、システムの高速化を進めてきたが、耐久性は十分に高められなかった。投資家の信頼を回復しなければマネーを呼び込めず、世界の市場間競争からも劣後しかねない。
取引の電子化は、システム障害と隣り合わせだ。今回ほど大規模ではないが、東証は10年のシステム刷新後、12年と18年に障害を起こしている。米国でも13年にナスダック証券取引所、15年にニューヨーク証券取引所でトラブルが起きるなど、海外の主要取引所でもシステム障害は決して珍しいことではないようだ。
だが米欧では、どこかの取引所がシステム障害を起こして売買を停止しても、今回の日本のように市場全体が機能不全に陥ることは少ない。複数市場に取引が分散しており、すぐに別の市場に投資家の注文が流れる仕組みが出来ている。『デジタル庁』の創設も言われるこの時、産官力を合わせて事故防止と、発展的解決策を急いで欲しいものだ。デジタル戦略は、国土の大小資源の多寡を問わない。