2019,11,20, Wednesday
8月末の東京地裁が出した、「路線価に基づく相続財産の評価は不適切」とした判決に、波紋が広がっている。国税庁は、路線価などを相続税の算定基準としているが、中古マンション評価に於いて、「路線価の約4倍」とした、国税当局の鑑定評価を裁判所が認めたから。路線価は、取引価格(時価)の8割程度に設定されているため、節税対策としてマンションを購入する人もいる。
あくまでも一般論ですが、1億円の現預金の評価額は1億円、ところが1億円でマンションを購入したら、その評価額は5~6千万円になります。これが節税のカラクリです。またタワーマンションでは、高層階と低層階の販売価格が、上ほど高く、当然中古マンションになってもこの傾向は同じですが、固定資産税の評価は全戸ほぼ同額というのも、節税のポイントです。 裁判所が路線価に基づく相続財産の評価を「不適切」としたのは、2012年6月に94歳で亡くなった男性が購入していた、都内と川崎市のマンション計2棟。購入から2年半~3年半で男性が死亡し、子らの相続人は路線価などから2棟の財産を、「約3億3千万円」と評価。銀行からの借り入れもあったため、相続税額を「ゼロ」として国税側に申告した。 だが男性が購入した価格は2棟で計13億8700万円で、路線価の約4倍であった。国税当局が行った不動産鑑定評価でも2棟の評価は約12億7300万円で、路線価とはかけ離れていた。このため国税側は、「路線価による評価は適当ではない」と判断。不動産鑑定(不動産鑑定士という国家資格者が鑑定する)の価格を基に、「相続税の申告漏れにあたる」と指摘し、相続人全体に計約3億円の追徴課税処分を行ったが、相続人らは取り消しを求めて提訴していた。 土地や家などの相続財産は、「時価」で評価すると法律で決められている。ただ国税庁は、「納税者が時価を把握することは容易ではない」として、主要道路に面する土地について「路線価」を毎年発表し、相続税や贈与税の算定基準としている。路線価は、土地取引の目安となる公示価格の8割とされていて、国税側は割り引いて(やって)いると考えている。 なお建物は、市区町村の固定資産税評価額がそのまま適用される。従ってこちらは意見が分かれないのだが、「土地」と「マンション」は、先の例のように相続人側の路線価評価で約3億3千万円、国税側の不動産鑑定価格は約12億7300万円、因みに購入価格は約13億8700万円だから、国税側が裁判所に提出した鑑定価格に近いモノがある。少なくても10億モノ違いは、少しひどいと思う。 是正されつつあるが、まだまだタワーマンションなどには、実勢価格と相続税評価額には大きな乖離が見られる。そこが相続税減税のノウハウだと言われている。しかし台風19号らの水害で、川崎市武蔵小杉のタワーマンションは、電気も水も止まってしまった。国土地理院の古図によると、武蔵小杉あたりは川であった。節税も大切だが、生活の場であることも忘れてはならないだろう。 先の東京地裁の判決に不服の原告相続人は、高等裁判所へ控訴している。因みにこの間も、約3億円の追徴課税に対して現在は年利5%の金利がついている。この先控訴審でも相続人が敗訴すると、来年の3月までは年5%、4月1日からは年3%の金利がかかる。文句を言う時は、ある種の覚悟がいるのであります。 |