2024,02,13, Tuesday
成年後見制度は2000年に施行された高齢化社会への対応策の一つであり、認知症、知的障害、精神障害などの理由で、ひとりで決めることが心配な方々は、財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続など)や身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認など)などの法律行為をひとりで行うのがむずかしい場合があります。
また、自分に不利益な契約であることがよくわからないままに契約を結んでしまい、悪質商法の被害にあうおそれもあります。 このような、ひとりで決めることに不安のある方々を法的に保護し、ご本人の意思を尊重した支援(意思決定支援)を行い、共に考え、地域全体で明るい未来を築いていく。それが成年後見制度です。 不動産業界はこの『成年後見制度』と深く関係があります。売却依頼を受ける際に一番の心配は、「この不動産売れるかな」ですが、これまでの心配の源は『価格』でしたが、昨今は『意思確認は大丈夫かな』という心配です。特に70歳を超える所有者は、まずこれを心配します。ここがクリアー出来て、『媒介契約』を結びます。 利用が伸び悩む「成年後見制度」の見直しが、法制審議会で始まることになりました。後見人に選任された人が強い権限を持ち、不適切な行為が疑われても交代が難しいとされ、利用者の支援に当たる福祉関係者は「不透明だ」と批判しています。一方では後見人のなり手不足の現状もあり、制度面での課題は山積している。高齢化は待ったなし、抜本的な改善に向けた検討が急がれるのです。 現場での肌感覚では、売買契約や賃貸契約の際に、売主や所有者がハッキリした意思表示(売ります買います、貸します借ります)が出来れば何の問題もないのですが、この意思表示が出来ないまたはあやふやな場合です。これより前段階で『異常』を察知した場合には、家族信託制度など打つ手もありますが、多くの場合は、『その時』になって困るのです。 困ってから裁判所に『後見人の選任』を親族等が申請するのですが、財産が自宅と賃貸物件1~2棟と現金少々(1千万円以下)程度であれば、家族の者から選任されることがありますが、それ以上の資産家になれば弁護士や司法書士など士業家が裁判所から選任されます。勿論『報酬の支払い』が発生します。主旨は、後見される被後見人の財産を保護・保全することが目的です。配偶者やこどもといえども、必ずしも被後見人の『見方』と看做していないのです。 「本当は心が通じ合った支援者が就くべきだ」という言葉には、関係者の怨念が込められているようです。選任された後見人とのこの関係は、原則被後見人の死亡まで続きます。馬が合わない人と、何年もつきあうことになります。また報酬が払えない人には、親族以外の後見人はつかないことになります。独居老人が増える中、「成年後見制度」の見直しは喫緊の市井の課題であります。 |