11月1日(土)大阪・天満橋のエル大阪で、税理士法人トータルマネージメントブレーン主催の、出版記念セミナーが、同社坪多晶子税理士と東京からの江口正夫弁護士によって行われました。2人の共著「資産家のための民法大改正徹底活用」にも述べられていますが、40年ぶりの民法改正に関して、法務・税務の両面から切り込んだ本がないとのことで、2人がそれに挑戦しています。
民法の中の相続法の改正は、高齢化社会の進展や家族のあり方に関する国民意識の変化等の社会情勢に鑑み、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から、相続に関する規律を見直す必要に端を発しています。親を尊敬する、親の老後を看取る意識の希薄化を民法は心配したのです。
改正相続法の施行は、原則令和元年7月1日から、つまりもう始まっています。しかし例外が3つあり、例外1「自筆証書遺言の目録の自筆不要の規定」は本年1月13日から既に始まっていますが、これは遺言の全文自筆だったところが、目録部分はワープロでも例えば不動産登記謄本や全部事項証明書等は印刷したものを使っても有効になります。
年間の死亡者130万人のうち、遺言は1割程度の13万人、その内7割程度が「公正証書遺言」。これには、数万円~数十万円かかります。原則的には公証役場へ出向いて行って、その際2人の証人が必要となります。面倒くさいという国民の声が、人数に表れています。相続法を勉強すればするほど、遺言は大事な権利であり義務でもあると私は考えます。
これが例外3、「遺言書保管制度は来年(2020)7月10日」から。自筆証書遺言は秘匿性が高いだけ、被相続人の死亡で遺言の存在が分からなくなることがデメリットです。それを法務局で預かってくれて、求めに応じて閲覧もプリントアウトもしてくれるようになります。民法も、「遺言」の重要性に改めて光を当てています。
例外2は、「配偶者居住権・配偶者短期居住権」はいずれも来年4月1日」から。子どもが同居する家庭がほとんどない昨今、親父が死んだら長男が実家を相続し、母親を追い出して売却するかも知れないと民法は心配しています。同居していたら、親父が死んでも母親の生活はなにも変わりません。これにより長男が相続しても、母親の居住は保証され、長男は土地・家の評価額から配偶者居住権分を差し引いて取得します。
仮に母親が自宅を相続するようになると、取り分のほとんどがこの不動産対価に変わり、生活費が得られなくなる心配があります。そこに配偶者居住権・配偶者短期居住権を設定して、当然自宅の土地家屋評価額より安いだけ、現金が母親の元に残り、安心して生活を続けることができる訳です。
今体調が悪いと心配するお父さん(お母さんのケースもあり)、少なくても桜を見ないと死ねませんよ。そうそう一日も早く、自筆証書遺言を書いて、法務局へ自分で行けるうちでなければダメです。郵送は、認められていません。法務局が本人確認をして、遺言を預かりますから間違いもなくなり、死亡後の検認も要らなくなります。お母さんも、栄養価の高いものをお父さんに食べさせて、一緒に満開の桜を見て下さい。
ただ気をつけなければならないのは、配偶者短期居住権は何の手続きも要しませんが、「少なくても6ヶ月間」とまさに短期で、配偶者居住権は手続きが必要です。当然ですが、この場合の母親(配偶者)が死んだら、配偶者居住権も消滅します。また第三者に売却することも、出来ません。
その他の変更も学びましたが、ここまでが市井のわれわれには特に必要なことです。何度も小欄に書いていますが、遺言(ゆいごん・いごん)は、遺書(いしょ)とは違います。書いてもすぐ死ぬことにはならない、むしろ安心して長生きできることでしょう。