公益社団法人香川県宅地建物取引業協会では、新規開業者のためのセミナーを開催しています。今年2度目のセミナーには、8名が申込みをして本日は6名が、香川県不動産会館へ足を運んでいました。開講当初は40~50名を迎えていましたが、このところ景気が良いのか、参加者が減っています。
セミナーは昼から2時間の予定ですが、「1.不動産業界の現状と今後の展望」を不動産鑑定士&取引士の松岡良幸氏が、「2.創業融資制度等の説明」を日本政策金融公庫から萩森学治氏が、「3.現役不動産業者の体験談」を大西不動産の大西一正さんがそれぞれの時間内で、坦々と話しています。
暴騰の松岡良幸氏の話で、「こんな優しい業界は他に例がない」から始まり、「どんなに大きな不動産業者でも、独占寡占は出来ない」と実態を上手く解説していました。私も全く同感です。不動産業者には、処理する件数には差がありますが、人脈中心の営業ですから、まっとうな人生を送っていた人は、必ず案件が来ます。だから私のような業歴の比較的古い者も、新人業者とはフレンドリーな関係が欲しいのです。
その分松岡良幸氏も言ってた通り、初回は教えます。個人になるか団体になるかは分かりませんが、困った時には声を掛けて下さい。今からはこれまで以上に、「高度な知識と豊富な経験」が求められるのですが、高度な知識は個人の努力が必要です、豊富な経験は開かれた業界の気風が共有されると、大きなアクシデントは避けられます。
松岡良幸氏の話が続きますが、松岡氏が文部官僚を辞して帰省し、開業したのが1998年(平成10年)で、その頃の高松市丸の内、西日本放送東の公示地「高松5-18」の価格が388,000円/㎡(約128万円/坪)で、2016年昨年の同地点の公示地価格は152,000円/㎡(約50万円)と、何とこの18年間で61%の下落率。
日経平均は、同じ1998年3月3日の最高値17,276円で、2017年3月9日の終値19,318円と、1998年当時より上昇しています。景気が回復しているのに、地価の上昇が見られない。しかし、回復の兆しは見えています。前述「高松5-18」の価格は、平成27年度から下落が止まっています。
価格は下がっていますが、受取報酬額=価格(契約金額から報酬額が決まる)×件数ですから、一方件数はどうなっているか。香川県下の平成17年の取引件数は8,000件だったのに対して、平成27年は9,258件で28年は1万件を超えています。どうにかなると、松岡氏は訴えています。
話の展開が荒っぽい松岡氏の次のテーマは、食えるか食えないか?入会後数年での廃業者は、ほとんどいない。私も協会の入会審査委員会のメンバーですが、退会者の多くは高齢化の廃業が圧倒的に多いのは事実です。
また開業のコストも、他の業界に比べて、圧倒的に低いのです。一番の高額出費は供託金1,000万円ですが、これも協会と車の両輪をなす「保証協会」に入会することで60万円ですみます。もちろんこれらの入会のために入会金や会費も発生しますが、先の60万円を含んで協会に支払うのは150万円程度です。
さらに廃業が少ない理由が続き、従業員不要、美しい事務所不要、ハイテク不要、事務所も自宅兼用も可です。しかし私は、パソコン1台程度とFAXは必要だと思いますが、それにしても10万円もあれば揃います。分譲業者は現物を売るのですが、宅建業者は情報を売ります。イニシャルコストが、全く違います。
そして私は一番大きいメリットは、「定年がなく終生現役」だと思います。もちろん本人の、誰にも負けない努力は不可欠ですが、頭と足がしっかりしていたら、80歳でも90歳でも現役続行です。仮に今50歳で脱サラするとしたら、受験勉強も大変ですが3年やれば合格します。その後30年40年使うとなれば、投資対効果は十分採算が合うと思います。
特に、女性の活躍を期待します。売買担当者は男性でなければ務まらないというのは遠い過去の話、今では賃貸仲介も売買仲介も、女性パワーが炸裂しています。これからの健康長寿を考えるなら、宅建業への新規参入も有りかなと思います。