2022,07,14, Thursday
東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は13日、3.11東日本大震災での東京電力福島第1原発事故を巡り、東電旧経営陣が津波対策を怠り会社に損害を与えたとして、総額22兆円を東電へ賠償するよう株主が求めた訴訟の判決で、5人対象のうち4人に計13兆円余(約60%)の支払を命じた。このように、旧経営陣個人の責任を認める司法判断は初めて。また賠償額は国内の民事裁判で最高とみられるが、実際の支払は難しそうだ。
朝倉佳秀裁判長は、「7年かけた判決内容をよく聞いて」と前置きし、判決では東電子会社が、政府の地震調査研究推進本部が震災前の2002年に公表した地震予測『長期評価』に基づき、08年3月に福島第1原発に最大15.7㍍の津波が到達すると試算していた。これらから、東京電力福島第一原子力発電所で重大事故が生じないよう最低限の津波対策を速やかに指示すべきだったが、注意義務を怠ったと判断した。 また原発の主要建屋や重要機器室に浸水対策を実施していれば、津波による重大事故を避けられた可能性が十分あったとした。続けて賠償金の根拠は、廃炉や被害者への賠償金、除染などの費用として13兆円余と算出した。刑事裁判の刑期は、検察側の求刑に対して80%程度と私は見ていたが、この類いの支払額として60%は少なくない。 核心の経営人の責任に関して朝倉佳秀裁判長は、原子力部門ナンバー2だった武藤栄元副社長(72)が、国の『長期評価』の信頼性は不明と評価し、土木学会に検査を委託する方針を決定したまま放置したと認定。経営トップの勝俣恒久元会長(82)らは、こうした判断に不合理な点がないか確認する義務を怠ったとした。 事故との因果関係については、先にも書いた通り原発の主要建屋や重要機器室に浸水対策を実施していれば、津波による重大事故を避けられた可能性が十分あったと結論づけた。旧経営陣の、「想定以上の自然災害」とする反論を退けた。また原発事故は11年3月に発生。国の『長期評価』による対策工事は約2年が必要だったとし、10年6月に就任した小森明生常務(69)は賠償責任までは認められないとした。 旧経営陣の5人は、勝俣恒久元会長(82)、清水正孝元社長(78)、武黒一郎元副社長(76)、武藤栄元副社長(72)、小森明生元常務(69)だが、小森明生常務(69)を除いた先の4人に賠償命令が出た。この類いの訴訟として原告が勝訴し、被告個人に賠償命令までが出るのは、最初に触れたとおり初めてで、画期的なことだ。これまでの常識を排し、新たな時代の扉が開いた感がする。 経営者の端くれの私も、この判決には仰天した。これまでになかった判断で、日本の立法・行政・司法のみならず、産業・経済・医療・教育界に至るまで大きな影響を及ぼす可能性を秘めている。NHKチコちゃんの言う通り、「ぼぉーと生きてんじゃないよ」と一喝された判決であります。このところ、あり得ない事件事象が発生している日本。逆恨みされた安倍晋三元首相の落命、非常識が常識化しているのだろうか。 |