2018,02,23, Friday
平成29年度国土交通省の「住宅ストック維持・向上促進事業」に参加している、表題の協議会(「(一社)ワールドインスペクション」代表大北和則氏)の第8回検討会でした。こちらは、高松市中野町のルポール讃岐を会場としています。その地方独特の住宅をつくり、新築から中古になっても、50年程度住み続けられる住宅づくりシステムの構築を目指しています。
そのために地元金融機関や、中古住宅を仲介する宅建業者や、その際の価格を査定する不動産鑑定士まで巻き込んで、喧喧諤諤の議論がなされています。協議会は全国に53チームあり、助成金は単年払いですが、事業計画は複数年の約束がなされているようです。継続が求められるのは、当然のことです。1年間では、結果までは出ません。 構図は私が平成24年に取り組んだ、平成24年度国土交通省「中古不動産流通市場の活性化に関する調査検討業務」と同じです。国から公募で選ばれた㈱価値総研へ方針と資金が流れ、そこからインターネットで応募して、採択された協議会へ方針と資金が流れます。多少は、途中の㈱価値総研が営業収入とします。 国土交通省をはじめ、各省の省員の数は、案件に対して少ないのです。そこで、民間のシンクタンクを使うという仕組みです。先の2月13日(火)に、東京大手町で行われたシンポジウムは、この「さぬき云々」のような協議会が全国から集まり、成功事例に学ぶためのものでした。 200名程度が集まっていて、熱気に溢れているという印象でした。国土交通省からは、盛んに案件ごとに「住宅局」と「建設不動産局」の両局から、バラバラで盛りだくさんの政策施策が出ています。短時間(5~6年程度)で、結果にたどり着いています。 とは言いながら共通しているところは、「住宅履歴」を残そうとするところです。新築は言うに及ばず、中古住宅(住宅局は既存住宅という)もインスペクションと呼ばれる「建物目視検査」をしたものの履歴を、残そうとしています。リフォーム・リノベーション時も、結果を残すように指導がされています。 将来の中古住宅の流通促進から、中古住宅の見える化をして、その資料を履歴としてインターネット上のデータベース化しようと考えているようです。このスタイルの原型はアメリカにあり、アメリカの住宅は新築が10%に対して中古は90%の市場です。これに対して日本は86%の新築、14%程度の中古流通です。余談ですが、イギリスは日本と真逆の数字になっています(国土交通省平成25年6月統計)。 地震や自然環境が違うので一概には言えないと思いますが、国の政策にも、長短が関係しているようにも思います。「スクラップ&ビルド」、新築が当たり前のように思われていたこの国が、30年、50年、75年、100年住宅と言い出したのです。地球環境という側面からも、使える中古住宅は、リフォームを重ねて使いたいものです。 ここをクリック |
2018,02,21, Wednesday
脳科学者・医学博士の岩崎一郎(盛和塾東京)氏が、2016年3月に上梓した実に興味深い本です。岩崎イチロー・クレア夫妻は、当時二人が暮らしていたシカゴで知り合い結婚し、日本で、「心のかよい合うコミュニケーション」を支援する会社を設立。リーダー育成・チームビルディング、フィロソフィ浸透などの講演・研修・コンサルティングを提供している。
稲盛経営のベースになっている考え方は、書籍「生き方」や『京セラフィロソフィー』などに著されている「人間として何が正しいのかということ。利他の心が大切で、心を高めることが経営を伸ばすこと」だといわれているのです。 このことを彼は、脳科学の論文を使って証明しています。心が明るく前向きになると、脳が活性化することや、利他の心・無心の心を極めていくと、脳の活性が通常の何十倍~何百倍も高くなることが分かりました。 また稲盛和夫塾長が言われている「経営12カ条」にある「事業の目的・意義を明確にする。公明正大で大義名分のある高い目的を立てる」「思いやりの心で誠実に」などについても、大義名分のある高い人生の目的を持っている人の脳は健康が維持されるという論文や、人の気持ちを推し量り、思いやりのある行動をすると視野が広くなる脳の回路が活性化すると言う論文などが次々に見つかってきたのです。 特に驚いたのは、「集合知性」について、人々が心を一つにして同じ目標に向かっていく時、集団としての知性が高まり、人類の叡智が発揮されるのです。この集合知性によって、平凡な知性の人たちのグループが、天才知性を持つ人よりも遥かに高いパフォーマンスをあげられることも、近年の科学的研究から明らかになってきました。 つまり稲盛和夫塾長の教えは、脳科学の面からも全くその通りという実験結果に裏打ちされたのです。稲盛和夫塾長の教えに没頭すれば、あなたの脳も喜ぶわけです。 これは今日の夜の、「スピードスケート女子団体追い抜き」でも発揮された。決勝のオランダ戦、一人一人の実力ではどう見てもオランダが上だ。それでも3人の息が合って、オリンピック記録で強豪のオランダに大勝した。時速50㎞になると言うスピードで、最後の2周でオランダに勝った。 かつてはレースで最後の百メートルを、「美帆に勝ちたい」という一心で乗り切ったが、今は違う。この野郎と思えば力に変わると思ったけれど重圧になる。今は「この人のために頑張ろう」と、喜ばせたい人を想像するようにしている。レース後の高木菜那さんの言葉が、それを物語っている。 |
2018,02,20, Tuesday
岩波書店から平成29年1月に、山田朗(あきら・明治大学文学部教授)氏が上梓した話題作です。私も買い求めて暫く、暖めていました。きっかけはなんと言っても、「昭和天皇実録」が宮内庁から随時刊行されたことです。まだすべてが、出尽くしたわけではありませんが、解説本が次々に世に出てきています。
2016年11月末現在、「昭和天皇実録」を検討対象・史料にして刊行された単行本はこの本以外に、13冊に及びます。日本のみならず、世界の歴史家が垂涎の的としている「昭和天皇実録」。山田朗氏も、その一人ですが、「昭和天皇実録」に記載されていることが全くその通りとは言っていない。そのために副題にあるように、残されたこと消されたことがあると書いている。 「実録」は、天皇・宮中を中心に描いた詳細な「昭和史目録」の機能を持っていて、歴史学研究にとってもその意義は大きいといえる。しかし天皇のお心は表出することがほとんどないが、天皇は、1937年の盧溝橋事件から始まった日中戦争について、陸軍をはじめ皆がその見通しを誤り、それが現在(1940年10月)まで響いているとわざわざ侍従武官がいない時に、宮中の側近に感想を漏らしている。 また実録では、天皇の発言を裏付ける資料「真田穣一郎少佐日記」があるにもかかわらず、また、そういった資料を確実に参照しているにもかかわらず、歴史叙述として採用されずに消されてしまっている。史料批判の結果、「真田穣一郎少佐日記」の当該箇所は採用しない、という判断は歴史叙述の常として当然あるだろう。 しかし、本書で検討するように「実録」においては、天皇の戦争・戦闘に対する積極的発言と見なされるものは、極めて系統的に消されてしまっているのである。あえて消されてしまっている部分があることは歴史叙述としては確かに問題があるが、そのことをもって「実録」の資料的価値が低いと断じてしまうのは早計だろう。 検証の仕方によっては、「実録」は、「植民地支配と侵略」や天皇の戦争指導といったことを考察する上での貴重な資料になり得ると考えられる。なぜならば、昭和天皇の「正史」としての「実録」に何がどのような観点で残され、そして何があえて消されたのかを検証することで、戦後70年以上経過した時点での<戦争の記憶>の<公的な継承>の到達点と問題点(欠落点)が見えてくるからである。 私は戦後処理などの、昭和天皇とGHQの葛藤の様子を期待していたのだが、1945年9月頃までの記録で終わってしまっている。続きを期待したい。 |
2018,02,19, Monday
なんと言うことだろうか、横領などの不正がおこらないように、稲盛和夫名誉会長は、『京セラフィロソフィー』の77「ダブルチェックの原則を貫く」という項目をわざわざもうけて、人は過ちを起こしがちだから、それを防ぐ防御策を会社はシステム化しなければならないと、警鐘を鳴らしていた。今からもう、50年近く前から。
人は誰しも、単純なミスを起こすことがある。また、してはならないと知りながらも、つい魔が差したように不正を行ってしまうことがないともかぎりません。こうしたミスや不正を防ぐためには、複数の部門や人が関わるダブルチェックのシステムが、働くようにする必要があります。 物品の購入における受入部門と検査部門という複数部門によるチェック、公印の捺印における捺印者と保管者という複数の人によるチェック、数字の計算における二者検算等は、その代表的なものです。特に金融機関や物品の管理においては、このダブルチェックを徹底し、ミスや不正を未然に防止する体制にしておかなければなりません。 以上が『京セラフィロソフィー』に書かれている「ダブルチェックの原則を貫く」で、稲盛和夫塾長の指導する盛和塾生の会社でも、このことが徹底されている。中小企業の弊社でも、このことに重点を置いている。『京セラフィロソフィー』は過去には塾生だけ配布だったのですが、今では一般書店で、誰でも購入することが出来るのです。 報道によれば、京セラ(京都市伏見区)は19日、会社の預金口座から約1億2600万円を着服したとして、神奈川県秦野工場の経理担当元男性社員(51)を業務上横領の疑いで、神奈川県警に刑事告訴した。元社員は会社の調査で事実関係を認めており、約5,960万円が返金されている。元男性社員は昨年8月に、懲戒解雇されている。 元社員は平成24年9月~29年6月、計4回にわたり同社の預金口座から本人が開設した口座へ、工場の支払名目などで約1億2600万円を送金したとされている。秦野工場で勤務していた時に、他の社員が不自然な取引に気づいて、社内調査で発覚したという。ここも稲盛和夫塾長が、例え上司であっても、不正には上下関係を超えて声を上げよと教えている。この部分で、稲盛和夫塾長は多少救われたか。 『京セラフィロソフィー』の続きには、人間誰しも出来心と言うことがある。そのような心の隙を突いてしまったがために、その人に罪を犯させてしまったのなら、これはマネジメントの責任ではないか。不正をしようと思っても出来ないシステムにしておけば、人を罪人に陥れることにはならないはずだ。私(稲盛和夫塾長)は、そのように考えるのです。 |