2024パリ五輪が始まりました。開会式もこれまでの競技場開催から、街の中心部全体を会場に、これまでの五輪では見られなかった嗜好で行われた。テロ行為等が多いと言われているパリで、警備担当は大変な思いをしながらの開催だったと思います。さすが先進国の、100年ぶりの五輪開会式でした。また100年ぶりという歴史も、流石フランスです。
そして前後して、競技が始まっています。勝った選手や競技はTV再生で何度も見ることと思いますが、私は柔道女子52キロ級の阿部詩(24)選手の2回戦敗退に感じるところがありました。やはり連覇は難しいですね。4年の歳月を経て臨む大会で、前回同様に勝ち進み優勝するということがどんなに大変か、彼女の試合を観ていて感じました。調子は良さそうでした。
前回優勝選手は、世界中の52キロ級選手から手本にされ、打倒目標として研究され尽くされます。特に柔道のような瞬間技を競う試合では、次の巻き返しの機会がありません。その一瞬にかけて詩(うた)選手も勝ってきたのですが、敗者復活がない2回戦敗退はその瞬間でやられたら、もう取り返しがつきません。阿部詩さんは号泣していましたが、どうしてやることも出来ません。
過去に柔道で2連覇した女子48キロ級の谷亮子さんがいますが、それだけに阿部詩選手も出来ると信じてこれまで苦しい戦いをしてきたはずです。反面2連覇のかかる兄の阿部一二三選手は、男子66キロ級で優勝しました。こちらはどうでしょう、妹の負けを肥やしにして臨んだと思います。もし柔道に男女混合チーム対決があれば、恐らくこの二人が優勝していたと思います。
一人で戦うトーナメント戦、勝つも負けるも紙一重。阿部詩選手は、絶好調だった。稲盛和夫塾長は、「絶好調も試練ですよ」と言いました。「調子が良いときこそ気を付けなければ」と盛和塾で、われわれ経営者相手に人間性の大切さを説いていました。一方講道館の嘉納治五郎先生は、柔道を通して精神を磨き、高めて、それを以て世の中の役に立つ人材を輩出していくという目的で柔道を始めたと語っています。
今の阿部詩選手にこんなことを言っても理解されないと思いますが、問題は阿部詩選手の2回戦敗退から観ていたわれわれが何を学ぶかではないか。反面阿部詩選手に52キロ級の代表を奪われた角田夏実(31)選手は、それでもあきらめないで48キロ級で金メダルに輝いた。軽量でどうしたら間違いなく勝てるか、考えた末に導き出した『巴投げ』と『関節技』。素人が観ても合点がいくが、考えを実践に移す練習のたまもの。減量と心の葛藤は、地獄を見たのではないだろうか。明暗悲喜こもごも、良い試合を二人が見せてくれました。これぞまさにスポーツの力、オリンピックの成果の一つでした。