2024年4月1日施行で、国土交通省は二つの制度改正を実施している。一つは、専任の宅地建物取引士(宅建士)が、他の事務所の業務を行うことを可能にする改正。もう一つは、建物状況調査(インスペクション)の普及促進のための改正。今日は二つ目の建物状況調査(インスペクション)について、少し解説をします。時代の潮流となっている『実家整理』の際にも、国土交通省と私は実施をお奨めするのです。
建物状況調査(インスペクション)は、コロナ前の2018(平成30)年4月から導入されている。私が関係する中古住宅媒介(仲介)の際には、売主さんに検査の実施をお奨めしています。全国共通の制度ですが、香川県版の(一社)ワールドインスペクションが行う建物状況調査では、これに加えて浄化槽の検査も調査項目の中に入れています。
建物状況調査は、既存住宅に住むうえで重要となる部分の調査で、専門の講習を受けた『建築士』が行う。宅建業者に対しては、(売買の)媒介契約締結時に、売主・買主に調査業者の斡旋の可否を書面で示すこと、調査を実施した場合には調査結果を買主に、重要事項説明(書)で説明することなどが義務化されている。実務では媒介契約時に、売主によく説明し、直ちにやるか、売買契約が成立してからやることになります。
検査料金が6万円前後と低廉だから、早めにやることをお奨めしています。誰が買うにしても、建物の肝心な箇所の欠陥は早めに知って買主に説明し、この状態だからこの価格ですと言うと、説得力があります。これまでの中古(既存)住宅は、概要すら分からないから心配でついつい腰が引ける状態が続いていました。『見える化』が今のトレンドです。
売主が検査をしないと言うと、買主が自分で費用負担をして実施を売主に懇願することになるのですが、想像されるように、買主が後から問題箇所を発見すると、トラブルになる可能性が高いと私は危惧し、売主に熱心に奨めます。私はこの制度が出来る前の段階から、国土交通省に数年間協力しました。宅建業者としては、納得して購入してもらえるこの制度の誕生を待っていました。
消費者の既存住宅への不安を払拭するため導入された制度だが、2022年度に国土交通省がおこなった調査によると、斡旋を行わない宅建業者が7割を超えていた(629件回答)。理由は、「業務の手間が負担」「売主・買主のニーズがない」「調査で発見されなかった劣化や不具合の状況が後で発見された場合に、売主・買主との間でトラブルになることが懸念」などだ。
一方、斡旋を受けて建物状況調査(インスペクション)を実施した消費者は、約8割が「とても満足・満足」と回答している。4月からの『標準媒介契約約款』も、改正された。『建物状況調査を実施する者の斡旋の有無』を示す部分で、『無』とする場合、その理由を宅建業者が記載する欄が設けられました。専任・専属専任・一般のすべての媒介契約で、改正されている。
またトラブル防止のため、理由欄の近くには「建物状況調査の結果は瑕疵がないことを保証するモノではない」という注釈が表示されている。極端に例えると、雨漏りがあれば「どこどこに雨漏りの痕跡がありました」と報告書には書かれている。これを確認して1千万円を、900万円に減額して売却します、宜しいですかと成約に向けての交涉となる次第です。見える化はトラブリ防止に、大いに役立ちます。