『生産性向上へ働き方改革』の一環として、日立製作所は給与を減らさず週休3日に出来る新しい勤務制度を導入すると発表している。働き方を柔軟に選択出来るようにして多様な人材を取り込み、従業員の意欲などを高めて生産性を引き上げる。パナソニックホールディングやNECも、週休3日を検討している。成果さえ上がれば、働く日数や時間にこだわらない経営が日本で広がる可能性がある。
このニュースに、私は愕然とした。大変な時代が来たものだ。時短に伴い、賃金が減るのならわかる。しかし言われているように、時短をしながら賃金を減らさないとなれば、密度を上げるしかない。もう一つ、企業内の高収益体質づくりが求められる。働く側で、こうしたスキルアップが全員で果たして出来るモノだろうか。
日本では1987(昭和62)年の労働基準法改正で、法定労働時間が週48時間から週40時間への短縮が盛り込まれ、週休2日が定着した。この時も、今の私のように無理だと言った人は多かったと思う。土曜日は半ドンで、週休1.5日だと考えていた。その頃は、身体を壊してまで働くという長時間労働の是正が目的だった。今では弊社のような中小企業でも、週休2日が当たり前になった。これが定着した現在、5日働いて2日休むのは理想型ではないだろうか。
これはこれで、高く評価出来るが、これが週休3日となれば、製造業にあっては人間がする仕事の大部分を機械化するしかなくなると私は危惧する。IT・デジタル系では、高収益体質も夢ではないが、果たしてそれが定年まで継続するだろうか。転職という手もあるが、転職して賃金が上がるのは、大変な苦労と努力が求められる。
それについてこられる従業員が、全員だとはとても思えない。見切り発車的に、週休3日が川の流れのように定着してくると思うが、ついてこられない従業員の生活がどうなるか、私は心配する。意欲的に働く従業員も増えると思うが、全員とはなるまい。その人達をどうするか、賃金格差は心のケアーだけでは問題は解決しない。
週休3日が普及するカギは、賃金だ。マイナビの調査では勤務日数の減少に合わせて収入が減る場合、78%の人が週休3日制を利用したくないと答えた。一方、1日の労働時間も収入も変わらないなら77%が利用したいと答えた。週休3日制をすでに導入した企業でも、賃金が下がる制度の場合は、利用率が低い。選択の余地がある場合は、まだ救われる。
このように読んでみて、どう考えても多くの企業で週休3日制が定着するとは思えない。賃金がそれなりに下がることが容認されるのであればあり得る選択だが、働かずして効率重視で売上高が上がるとは思えない。今のところIT・デジタル関連企業など、在宅勤務の試行が行われ、週休3日制のテストのような現状になっているが、賃金と連動ではない。あくまでも非常時の試行錯誤だ。
それともう一つ、高収益企業の従業員の週休3日が普及したとしても、ほんの一部の働く人の集団であって、それが全産業の週休3日制になるとも思えない。働く側にも感違いも多くなり、トップエリート集団はともかくとして、大多数の労働者は置いとけぼりをくらい、今以下の賃金に甘んじることになろう。今でも正規と非正規には大きな格差が生じている。今の収入以外にも、将来年金にも大きな毀損が生じる恐れがある。
日本の労働市場は、週休2日制が最適だと私は確信している。ほんの一握りが週休3日制になったとしても、恵まれた経営環境下であり得る話しで、自らの今以上の努力なくして継続出来るモノではないと私は思うのですが、いかがでしょうか。新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外へ新天地を求める戦略も頓挫するだろう。海外から安い資材エネルギー供給もままならない。考えなくてはならないときだが、それが週休3日制とは私の中では結びつかない。