日本銀行が7月5日開催の支店長会議に向けて収集した情報をもとに集約した、地域経済報告『さくらレポート』(令和3年7月)によると、各地域の景気の総括判断は、「『持ち直しのペースが鈍化している』とする地域があるなど、感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、多くの地域では『基調としては持ち直している』または『持ち直しつつある』」と捉えていると報告されている。
住宅投資については、「緩やかに持ち直している」(北海道)、「貸家を中心に減少している」(東北)、「減少している」(北陸)、「横ばい圏内の動き」(関東甲信越、四国)、「下げ止まっている」(東海、近畿、中国)、「持ち直しの動きがみられる」(九州・沖縄)と、復調の兆しをみせている。しかしどう読んでも、多くの地域では「基調としては持ち直している」と、私には読めないが、日銀の立場がそう言わしめているのか。
また、賃貸住宅関連の投資について、企業から次のような声が挙がっている。「建築コストの上昇(木材価格の異常高騰)による利回り低下から、貸家投資を慎重化する動きがみられている」(釧路)、「コロナ禍の影響により、今春は県外から県内の大学に入学する学生が減ったこともあってか、アパートの空室が目立っている。こうした状況を受けて、今後はアパートの建主が投資スタンスをより一層慎重化させる可能性がある」(青森)。
「貸家市場は供給過剰が続いており、投資利回りの低下や金融機関の貸出態度の厳格化から、着工戸数は当面弱い状況が続く見通し」(金沢)、「リモートワークの普及により在宅時間が増えたことで、手狭な賃貸住宅から分譲住宅へ転居する動きがみられており、住宅販売を下支えしている」(前橋)。
「貸家は、金融機関の慎重な融資姿勢もあり、新規物件の需要は居住用・投資用とも増え難い状況。当面、新規着工戸数は弱めの動きが続く見込み」(京都、大阪)、「金融機関のアパートローンの貸出態度が厳しく、貸家の新規案件は低調」(那覇)。沖縄は本土からの移住によって、賃貸住宅さえも不足気味とこれまでは言われていた。
驚くのは好景気が続き、アパート・マンションの建設が絶好調と言われていた沖縄で、『低調』という体感は、やはり新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、内地からの観光客が減ったが、コロナだけはしっかり持ち込まれたという沖縄独自の現象が見られるのだろうか。決して沖縄が悪いのではないが、5月の大型連休の後遺症が、『沖縄の経済』にまで影響していることが確認された。
沖縄は統計分母が小さなことから、係数が上がれば『異常値』として反応することになる。賃貸住宅にしても、これまで仮に8万円の賃料だとしても、入居者が失業すればたちまちに滞納が始まり、破綻への時間はアット言う間だと思う。それを心配して、金融機関が融資を閉めたのは、想定内と言えそうだ。
また全国的な県市町の動きとして、『公営住宅の新築』が無くなり、これからは民間賃貸住宅の借り上げで、公営住宅供給を賄おうとする動きに変わっている。独居老人の入居などの問題は抱えるが、供給過多需要増(公営住宅の供給がなくなり)のなかでは、民間仲介管理業者の協力無くして、市井の居住確保は難しくなっている。