日本経済新聞によれば、企業が保有する不動産を売却する動きが広がっているようだ。東京オリパラの中心的存在の『電通』が、自社ビルを売却してリースバック(賃貸借契約でそのまま使用する)方式で、そのまま本社として使う計画が発表されて、驚いたばかりだが、JR各社は保有するホテルやオフィスビルをこれから逐次売却するという。
新型コロナウィルスの影響が長期化するなか、資産のスリム化や財務負担を軽くしつつ設備投資資金を確保する。世界的な金融緩和で資金が豊富なファンドが買手となり、売却後も使い続けるカタチが増える。保有から使用へと、持たざる経営の転換も進み始めている。JR東日本は、『鉄板』と言われていて、どんな事態になってもここだけは黒字と思われていた。
そのJR東日本は、自社も出資して立ち上げた機関投資家が資金を出すファンドなどに、オフィスビルなどを売却し、5年間で1000億円超を調達する。JR西日本もオフィスや商業施設をファンドに売り、300億円程度の調達を目指す。JR九州も今後、不動産投資信託(REIT)を立ち上げる。リートは実物不動産が買いにくい海外投資家向けに、証券化した不動産を販売するやり方だ。
海外投資家は、日本の相続が発生した場合などの節税は関係ないので、『小規模宅地の評価減』などのメリットを全く必要としない。だから現物の不動産を必要としていない。普通の株式投資の如く、REITを買う。各社とも調達した資金で、駅周辺の再開発などの資金を確保すると同時に、保有不動産を優良物件に入れ替えていく。
不動産売却は、新型コロナウィルスによる業績悪化が目立つ業界を中心に増えている。しかし業績が堅調な企業でも、在宅勤務の定着など新型コロナウィルスによる働き方の変化を受けて、本社を売却する例が増えている。リクルートホールディングスや横浜ゴムは、本社ビルを売却することを決めた。
売却後も、賃貸で利用を続ける。今の時代、本社ビルを売ったからとて、急に経営が傾いたとは見ない。『何でもあり』という、選択肢が増えただけだ。不動産は一定の目的を持つ場合は別だが、『所有から使用』へ変わりだした大きな波も、津波以上の規模を持っているように思う。
国もここへ来て、国有財産(土地)の売却から『定期借地権(例えば50年間の借地)』の活用に舵を切ったようだ。土地の購入がなければ、その分初期投資額が減る。土地使用目的に合わせて地代を徴収し、日本一の大家さんが『日本国財務省』になるかもしれない。定期借地権活用PR資料によく登場したのが、固定資産税のほぼ全国統一税率1.4%。課税標準額に1.4%を掛けて、税額を算出する。
1.4%×72年間=1.008つまり自分の所有であっても、72年間固定資産税を支払えば、もう一度代金を払うことになるという考え方。定期借地権の存続期間は、100年でも1000年でも良いと言われている。相手が国なら、100年もあり得るのではないですか。