旅行大手JTBは18日、国内店舗の2割にあたる100店程度を今後5年間で段階的に閉鎖する方針を明らかにした。新型コロナウィルス感染症の流行で経営環境が厳しく、店舗の統廃合を進めてコストを削減する。またオンラインでの接客を拡大することで、業務の効率化を図る。旅行斡旋業界(旅行大手と言うが)は、今後抜本的な改革が求められる一方、『高齢者難民』の傾向は、ここでも表出している。
JTB(元はJapan Travel Bureauと言ったと思う)は、オンライン旅行会社の台頭などの影響を受け、かつては約千カ所あった店舗を減らしてきた。現時点で、個人向け店舗は約450店。コロナ禍も加わり、削減の上積みが必要と判断したもようだ。旅行各社の業績は落ち込み、JTBは冬のボーナスを支給しないことを労使で合意している。
若者に人気の旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)も今年6月、国内約260店舗のうち、約3分の1にあたる80~90店を来年の夏頃までに、閉鎖すると発表している。先に述べたように、旅行斡旋業界(旅行大手と言うが)は、どここことなく、大苦戦している。特に大手は、逆風ももろに被ることになる。
皮肉なことにこの業界は、『デジタル化』が災いとなっている。インターネット上に、いくつかの『旅行斡旋サイト』が立ち上がり、われわれも旅行代理店よりも『簡単便利』なサイト利用を始めている。わざわざ足を運んで届けてくれる『前売り券(予約券)』を、提供業者の例えばJALやホテルが、その券を窓口で必要としていないのも大きな変化だ。
それに加えて、これまでは大手旅行会社しか知らなかった『ホテル・旅館』や『食べ物処』の有益情報も今や簡単にネットで検索できる。何カ所も同時に必要だというなら別だが、1泊するのには1つの宿泊施設で良いし、食べるのも1日3食で十分だ。言葉が通じる『国内旅行』なら、大手旅行会社に頼る必要がなくなってきた感じがする。
一方海外旅行では、まだまだ大手旅行会社に頼むのだが、それも世界各地に『独占業者』がいて、そこから現地の情報を買っているという状況が公になり、海外旅行の常連客は、個人で宿泊・飲食施設を申込み、格安チケットで快適に海外旅行を堪能している。そのような様子が、フェースブックFacebookにも紹介されている。最も今は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外旅行は封印されているが。
もともと団体旅行から個人家族旅行へと斜陽化していた大手旅行業界だが、ここへ来て、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い『観光旅行』の先細り、多少はGo to travelでの巻き返しも期待されるが、『抜本的な改革』を考える苦しい時代の波に遭遇しているように思う。では、不動産業界は安定なのか。
日経新聞には、旅行大手JTB報道の横に東急不動産HD西川社長のコメントを掲載している。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は、不動産業界を根底から変える可能性がある。デジタル技術の活用で、ビジネスモデルの変革をスピード感を持って進めていく。ビックデータをいかしたマンション開発など、成長戦略を練る。不動産業界にも『デジタル化』の波は、確実に押し寄せてきている。