国土交通省が29日発表した2020年の『基準地価(7月1日時点)』は、全国の全用途平均で3年ぶりの下落となった。都市部の開発を牽引した訪日客需要が消失、都市商業地の減速感が強まった。『基準地価』は、47都道府県が7月1日時点の地価を、9月末に発表している。これに対して、『公示地価(1月1日時点)』が国から3月末に発表されている。いずれもその地の『不動産鑑定士』が価格を鑑定するため、関連性、相関関係は続く。
四国4県の基準地価は、住宅地や商業地を含む全用途の平均下落率が9~10年ぶりに拡大した。地方でも新型コロナウィルスの影響で観光客が減るなど、市街地を中心に経済活動が停滞した影響が現れた。4県の基準地価は、20年以上下落が続いていたモノの、最近は経済の緩やかな回復で、下落幅が縮小していただけに懸念が広がる。
四国内で下落が一番大きかったのは、愛媛県の▲1.6%。続く徳島県は▲1.5%だが、JR徳島駅前の一等地にあった百貨店、『そごう徳島店』の閉店は周辺の地価下落につながった。次の発表でも、まず上昇は考えられない。高知県は▲1.0%の3位、4県しかない中、四国4位の香川県でも昨年の▲0.3%から▲0.8%に下落が拡大している。四国4県は共に観光地を抱えているだけに、次ぎも心配なところであります。
不動産取引現場では、底を打って値上がりまでの力はないモノの、横ばい感は強くなっていた。回復を続けてきたところへ、やはり新型コロナウィルスで様相が一変した。しかし商業地に比べて住宅地は、影響が若干少ない。商業地は、全国平均で5年ぶりに下落した。東京圏と大阪圏は僅かに上昇したモノの、名古屋圏は8年ぶりに下がった。昨年、バブル崩壊(平成3年)以来、28年ぶりに上昇した地方圏も再び下落に転じている。
商業地でとりわけ打撃が大きいのは、インバウンドが地価を押し上げてきた関西だ。しかし、高速道路脇の大型流通倉庫などの需要は、底堅いモノがある。やはり、実需に支えられた需要は強い。新型コロナウィルスの悪影響は少なく、『巣ごもり需要通信販売拡大』という新しい業態に支えられた好影響が地価にも反映されはじめている。
では株価は、『基準地価3年ぶり下落』発表にどう反応しているかを見たが、一般銘柄ではよく分からないので、不動産投資信託(REIT)を覗いてみたら、軒並み下落している。リートは、いくつかの商業施設(商業ビル)を組み合わせて投資信託にして販売しているモノ。『生土地』を買いにくい『外国人』にも、リートだと投資しやすくなっていて、このところリターン(配当)がじりじりと上がっていた。
商業ビルの収益性も、新型コロナウィルスの影響で賃借人が抜けて、この先も、ますます収益が下がると予想される。テレワークになると、丸の内オフィース街といえども、利用床が減るだろう。軒並みに収益性が下がると、リートも3%程度あったリターンも1%とかになりそうだ。加えて都市部では、2023年問題が懸念される。東京圏などでは、1993年に農地を農地として耕作するか、それとも宅地化するかの選択期限の30年の終わりが後3年に迫っています。
この『生産緑地』問題で、広大な住宅用地が供給されて、東京圏・中部圏・大阪圏の土地がどうなるか。私は東南アジアへ展開していた企業や工場の日本回帰が、解放される大規模宅地への供給と相まって地価の安定につながるかと期待しています。もう日本へ帰って、AI・IoT・ブロックチェーン(分散型台帳)を活用してモノづくりをすると、従業員数は確実に少なくなります。となると、外国人労働者の助けも激減するだろう。これからの時代は再びの『原点回帰』、日本は日本で日本人の手によって、子どもらが希望を持てるように。