千葉県にある、築浅の約30戸の分譲マンション。ここの管理組合が、駐車場の負担問題で揺れている。住戸は埋まっているのに、機械式の立体駐車場が満車時の3分の1しか使われておらず、維持管理費などを十分に賄えないためだ。地方都市ではマンションは、そのグレードもさることながら、駐車場が住戸の2倍程度ついていることが売れ筋の常識だった。
駅に近いうえ、カーシェアリングが広がっている。高齢者の運転免許証の返納も増え、車を持たない住人が多くなった。負担軽減のほか、浸水リスクを減らすため駐車場の地下部分をなくしたいと自治体に打診したが、条例を盾に断られた。多くのマンションは、自治体の条例などで、一定の駐車場の設置が義務づけられている。こちらは一向に、変わらない。
この物件の場合も条例で戸数の50%以上、最低でも十数台分の駐車場を確保しなければならなかった。マンション管理業協会(東京・港区)の調べでは、都内の約6割の管理組合で駐車場の空きが発生し、うち機械式駐車場は4台に1台が空いている。駐車場豊富がステータスだった時代は、遠き彼方に去ってしまったようだ。
街中の有料の一般駐車場でも、『平駐車場』がよろこばれる。特に女性は、立体駐車場が大嫌いだ。自走式の駐車場も、デパートの買い物や街中のそれならある程度我慢も出来るが、毎日のそれも夜間の駐車は嫌われる。法律の絡みで、空きの時間貸しもままならない。新型コロナウィルスの感染拡大は、不動産市場自体を揺さぶっている。
マンション分譲も、大きな岐路に来ている。大都市のタワーマンションは、税制優遇もあって引っ張りだこだった。ところが神奈川県川崎市小杉の最新式分譲マンションが、水害で地下の電気設備がその機能を失いエレベーターも使えず、階段で辟易した住民が多く問題化した。その数年前は、50㎞歩いて帰宅した通勤客が首都圏で100万人にまで及んだ。
今振り返ると、この頃からマンションに対する評価が変わったと思う。とは言え、都会の住戸は一部富裕層を除き、マンションという選択肢しかない。考えなければいけないのは、地方都市にもこの傾向は散見される。つまり『戸建て』か『マンション』かの選択が出来る地方でのマンションのあり方だ。作る方は、どんどん作る。買手も今はそこそこいる。
新型コロナウィルス危機で、生活や働き方が一変し、不動産市場も転機を迎えた。がんじがらめの規制では、活力を失った『負動産』が膨らむばかりだ。バブル崩壊で、『不動産は右肩上がり』という土地神話が崩れた。庶民は、『価格』という価値で不動産を計った。行政は、『規制』という価値で不動産を観ようとしている。その視線は、今でも変わらない。しかし『生活』あっての『規制』だと思うが。