6月30日(火)日本経済新聞のトップ記事です。NTTが2030年までに自前の発送電網を整備し、再生可能エネルギー事業に本格参入するという。日本の再生エネルギー発電容量の1割にあたる、750万キロワットの発電量を確保し、独自の発送電網も使って顧客に直売する。その量が、四国電力より多いと言うから、2度驚いた。
脱炭素の流れが強まる中、資本力がある再生エネルギー事業者が生まれることで、国内電力の競争環境が一変する。2016年の電力自由化以来、発送電網を全国で展開できる事業者の参入は初めてのこと。25年まで、年間1,000億円程度投資するという。30年度までの累計は、1兆円を超える可能性がある。
全国約7,300の電話局の大半を「ミニ発電所」と見立てて、再生エネルギーの受け皿となる蓄電池を配備するほか、巨大な太陽光発電、洋上風力発電の設備も整える。加えて大手電力とは別系統の電力送配の仕組みを整備する。全国の電話局から近隣の工場やオフィスビルに大手の電力網だけでなく、自前の配電網も使って電力を供給する。
記事には書かれていないが、送配電網となれば電柱を新たに立てるのだろうか。新たな機会として、地中埋設が好ましいのだが、これには費用がかかりすぎる。自前の送配電網は、まさか今ある電柱を使う計画でもあるまい。今でも張り巡らせている電柱と電線、これが倍化すると考えると、これにも問題がある。
既存の送配電網は、大手電力が大型火力発電や原子力発電の電力を優先的に送る権利を抑えている。この結果、再生エネルギーによる電力は、東日本だけで送電線の容量の5~8割分が実質的に使えないとされ、事実上の参入障壁となっていた。NTTは独自のインフラで、この問題を解決する。よって、1兆円規模の投資になってしまうわけだ。
また送配電網を持つことによって、利用者の電力データが手に入る利点もある。通信データと掛け合わせることで、新たなビジネスを生むきっかけにもなる。通信ビジネスの成長鈍化に直面するNTTにとって、再生エネルギー事業は次の主力事業の一つである。固定電話は、早晩消えるだろう。「アパート・マンション」いわゆる賃貸物件に入居される方のほとんど全部は、固定電話を引くことはない。
多くの金融機関や商社が、海外の「シェールガス」の発掘等に大きな投資をしている。そのほとんどが、石油価格の下落で投資額割れを起こしている。OPEC国内の考えもバラバラで、サウジアラビアのように「増産」を言う馬鹿は多くはいないにしても、新型コロナウィルスで世界の石油は行き先を失い、1バーレル20~30ドルではないか。
NTTが取り組む再生エネルギーによる電力創造が前途洋々とは思わないが、今ある資金をどこへ投資するかでは、私は国内投資賛成派で尻の穴のこまい考えを持っている。グローバル・スタンダード、グローバルサプライチェーンは過去の成功体験で、「執着」は、不幸を必ずもたらす。NTTの頑張りに、私は多いに期待する。発想(発送電)が変わる。