旧高松南署跡地(高松市花ノ宮町)の利活用を巡り、複合型施設建設のため香川県から土地を購入した瀬戸内海放送(KSB)グループが、計画を撤回したことを受け、県は9日記者会見し、KSBとの契約解除を正式に発表した。施設の完成時期の1年先延ばしを申し出ながら、5ヶ月後に中止に転換したことについて、県の担当者は「残念としか言いようがない」と繰り返した。
県は売却先を選定するため、2017年度に土地利用の提案内容などを審査する「公募型プロポーザル方式」を実施。これに3事業者が参加した審査の結果、KSB瀬戸内海放送と関連会社でつくる法人連合体が選ばれ、県は2億2千万円で土地を売却した。旧高松南署跡地の土地面積は約2700㎡(約800坪)で、坪あたり275,000円であった。
KSB瀬戸内海放送は、多目的プラザや企業内保育園などを備える複合施設の建設を計画。昨年2月に着工予定だったが、同夏に完成時期の1年先延ばし、計画変更を県に求め、県は変更を承認。しかし昨年末、県に計画撤回を伝えた。このため契約解除となり、県は売買代金を返金し、KSB瀬戸内海放送は土地を返還し、違約金として30%の6600万円を支払ったと聞いている。
この計画撤回について、KSB瀬戸内海放送に批判の声が上がっている。「マスコミなら、会見を開いて説明責任を果たせ」という意見が大半のように感じる。確かに説明責任はあるものの、計画撤回は果たして世間が言う悪徳非道なモノだろうか。民間企業として、あり得ることではないだろうか。新型コロナウィルスの影響の、先読みまでは考慮されていないにしても、失礼ながらマスコミにも往時ような華やかさはない。
県との売買契約の10ヶ月後に、南200mの至近に約6,000㎡(2,000坪弱)の土地(NTTラインマンセンター跡地)を取得して、本社ビルを現在建設中であります。どちらの計画が先だったか、知るよしもないのですが、山下誠志社長としては、世間体よりも働く社員やその家族、関係者の生活を守る責任があると考えたのだと思うのです。
そのためには高い月謝の6,600万円を、ペナルティーとして払ってでも踏みとどまったわけではないですか。私は山下誠志社長の英断を、「お前もか」と言われそうだが、支持をします。ちなみにこの記事を書いている今月この日の相続税路線価は、67,100円/㎡、坪あたり221,000円。今の日経平均株価のように、激しく下落しています。この土地では、20%の下落であります。
土地価格の下落がキャンセルの理由ではないと思いますが、これからの舵取りは、「集中と深掘り」が求められています。過大な投資は、墓穴を掘りかねません。KSB瀬戸内海放送の規模で、キャンセルは常識的にはあり得ないことかも知れませんが、数年先には「英断だった」と賞賛されるかも知れません。社長業は孤独な、損な商売です。