本年度第2回の本部研修は、昨年末の税制改正大綱を受けての解説です。3月末の予算と同時に、可決施行されます。本日は大阪から、今仲清税理士と坪多晶子税理士のお二人をお招きし、掛け合いの解説を聴講しました。壇上で、どちらかが問題提起をして片方が答える。また「資料の〇〇ページをご覧下さい」と言われたら、二人を見ながら資料に目を通す三角形首振り、寝ている間がない。
通常の本部研修は、高松会場と丸亀会場で2日間にわたって開催される。それが初めての企画として、1日だけの一会場となった。二人の予定を、2日間拘束するのが難しかった。そのために会場を、香川県の真ん中に位置する、丸亀市綾歌町の「アイレックス」とした。初めての会場で、天候には恵まれたが、入場者数が気になる。
大谷雅昭会長が、「会員さんのためにやる」をモットーにしているため、税制という分かりにくい、だが避けては通れないテーマに対して、果敢に挑戦したのだが、これまでの丸亀会場200人、高松会場200人の合計400人には届かなかったかも知れない。折に触れて周知したつもりだが、PRが足りなかったのだろう。
一つだけ、読者に関係深い改正を紹介する。民法相続関係改正に伴う措置で、「自筆証書遺言」に添付する財産目録はこれまでと異なり、自筆でなくても良くなっている。今年1月13日(日)から既に、変更になっているものだ。従ってこれは、3月末を待たずに決定、進行中であります。国は、「遺言」でもめ事、特に「空き家」が増えることを防ぎたい。
遺言は、「公正証書遺言」が優れているとされているが、証人が2人必要で面倒だ、費用がかかる、原則公証役場へ出向くなどの手間が、「遺言」の作製にブレーキをかけているとして、国は「自筆証書遺言」を使いやすくした。やがて相続登記も強制されることになると思われるが、「遺言」で被相続人(死んだ人)次の所有者を決めておけば、問題はない。
「登記事項証明書」を取り寄せ、これに「目録1」と名前を付けて、「長男誰々に目録1を相続させる」、「次男誰々に目録2を相続させる」と自筆で書けば事足りる。この程度の手間で遺言が出来るなら、これは使えるようになる。冗談ように思うが、「遺言(ゆいごん)」を「遺書(いしょ)」と勘違いしているというのも聞く。
先のことになるが、平成32年の7月10日(制度整備に時間がかかるから)からは、法務局が「自筆証書遺言」を預かってくれる。こうなると紛失の危険がなくなる。相続は何と言っても「遺言」が決め手。気が変われば、また書き直したら良い。新しい方が有効となる。遺言があっても、使わずに「遺産分割協議」が親子兄弟間で整えば、それでも良い。いよいよ困ったら、黄門さんの印籠のように遺言は使える。
つぎに、配偶者(通常は残された妻)の居住権確保にも新手が登場します。
事例
前提条件①夫に相続が発生する
②妻、夫死亡時85歳
③自宅 建物相続税評価額 1,000万円(木造・築後15年)
④自宅 土地相続税評価額 2,000万円
⑤長男が自宅土地建物を相続する。妻は自宅に居住を続ける
(1) 建物所有権(長男)の評価
1,000万円×(22年×1.5-15年-8.33年(注1)(=9.67))
÷(22年×1.5-15年(=18年))×0.766(注2)=4,115,000円
(注1)居住権の生存年数 85歳女性の平均余命年数・・・8.33
(注2)複利現価率 年利率3%のときの9年の場合・・・0.766
(2) 配偶者居住権(建物)の評価
1,000万円-4,115,000円=5,885,000円
(3) 土地所有権
2,000万円×0.766=1,532万円
(4)配偶者居住権(敷地に対する権利)
2,000万円-1,532万円=468万円
(5)配偶者居住権(土地・建物に対する権利の合計)
5,885,000円+4,680,000円=10,565,000円
(6)所有権
4,115,000円+15,320,000円=19.435,000円
現行法では、土地建物3000万円の1/2を妻、1/2を長男が法定相続分で分けることになる。妻が住み続けるために、現預金で1500万円をあれば支払う。なければ、自宅の売却しか方法はない。建物をこのように所有権と居住権に分けることによって、妻は住み続けることが出来、他の預貯金なども妻が受け取れるように変わる。これは、平成32年(2020)4月1日から出来るようになる。