2010年から3年ごとに開催されている「瀬戸内国際芸術祭」、昨年が第3回でしたが、その経済波及効果が前回の2013年開催よりも5.3%増の139億円に上り、準備期間を含めた14年から16年末までの3年間の収支も、1.5億円の余剰金が見込まれると実行委員会から報告された。
来場者アンケートから、一人あたりの消費金額を県外からの宿泊者で5.3万円、航路の乗船者数などから来場者数を29万人として計算している。これは実行委員会と、日銀高松支店が産業関連表などを基に分析したものです。アンケートは、例えば乗船前に並んでいる人に書いて貰うなど、積極的でした。
5.3万円と29万人を、単純にかけ算すると153億円になるが、139億円でも前回の芸術祭から7億円増になったという。更にその内訳は、観光客が宿泊や飲食、交通費に支出した直接効果が86億円。直接効果によって、生産額などが増加する間接効果が53億円だという。この足し算は、私の結果と同じ。
収支では、県などの負担金や国などの補助金、チケット販売などの収入が13億8800万円に対して、作品製作費や運営費などの支出が12億3800万円と見込まれることから、差額分の1億5000万円が余剰となる予定。追加で支出がないことを、祈ります。勿論余剰金は、基金として繰り延べしておく?
私もいくつかの会場へ行きましたが、前回に比べて県外来場者の平均滞在日数や平均宿泊数が増えたことなどが、数字を押し上げたようです。中でも消費金額の多い外国人来場者が増えたことが、大きく寄与したと私も感じました。
次男の会社「㈱ライブイノベーション」が、JR髙松駅近北浜アリーナー付近で民泊をやっているのですが、瀬戸内国際芸術祭2016の夏、私が受け入れ役をした際にはアメリカからの親子4名が来ていました。確か3連泊だったと思います。
すっかり定着した感がある瀬戸内国際芸術祭2016でしたが、私は春会期に坂出の沙弥島へ行き、ここは春だけの公開だったためにこのタイミングで行かざるを得なかったのですが、海岸の砂浜に漁師網をモチーフにした作品が作られていたのです。
さらにその前の、常設トイレが印象的でした。このあたりには、公衆トイレがありません。このようなインフラ整備にも、芸術祭は貢献しています。海水浴客にも、これは便利です。しかもそれが、芸術かと思うほどのものでした。少し視点を変えるだけで、随分違ったものに仕上がるのだと感心しました。
高松市内にはもっともっと公衆トイレを創らないといけないと思いますが、芸術の街を標榜するなら芸術的工夫も必要だとおもいます。出来れば近くへ行くとそれだと分かるもので、「おもしろい」物を期待します。
島民に対するアンケートには芸術家と島民の交流、また見物客との交流も、12島の島民の72.1%が島々の活性化につながったと答えています。自分が住んでいる地域に作品が展示されて良かったとする人も約7割で、延べ約104万人の来場者で賑わった芸術祭を、島民も好意的に受け止めているようです。
また同アンケートでは芸術祭との関わりについては、45.8%が作品の受け付けや来場者の接待、食事の提供などに協力したとし、49.2%が作家や来場者と交流する機会があったと答えています。ボランティアの「こえび隊」には老若男女がいますが、頂けるのは交通費のみ。弁当持参と聞きました。
また芸術祭開催を機に45%が地域を再発見したり、愛着がわいたりするなど地域への思いや見方が変わったと答えています。島へ帰って新たに、飲食店をやる人も出てきたとか。不便も見方を変えれば、ゆったりしたアナログの舞台です。本来の生活がどうあるべきか、気づくこともありますか。
秋会期に伊吹島へ行きましたが、港から見学コースへ入ったところにテントが張ってあって、そこに数名の還暦組の女性が「困ったら聞けよ」という顔で待機されていました。「このテントには島の美人しか入れないのですか」と馬鹿なことを聞いたら、「そうで-す」と大合唱でした。