拓殖大学総長兼学長渡辺利夫氏の、「私の中の中国」論です。拓殖大学学友会四国連合会が主催した講演会。拓殖大学の四国連合会長が高松市在住上野文夫氏で、わざわざ案内文を持参されました。先の宅建協会会長高木康博さんも、拓大OBで、本日も会場へお越しでした。
渡辺利夫拓殖大学総長によれば、現在の日中間は、やっかいな問題を孕んでいると言います。中国の海洋権益の拡大基調には、大いに問題があります。自衛隊OBの軍事分析官によれば、南シナ海(南沙諸島)は中国の統一が整い、東シナ海に中国の海洋覇権が及びはじめていると言います。
もともと中国は大陸国家です。沿海部の距離は奥行きに比べるとは非常に限定的で、そこに巨大な港は数えるばかりしかありません。上海など昔からの港もありますが、山岳部からの土石の堆積で、港周辺は底浅なデルタ地域となり、巨大艦船が出入りできない状況です。
一方台湾はいい港です。台湾周辺の海は深くて、中国は台湾を軍港にしたいと考えています。中国での海洋力は、脅威です。日本を上回るGDPの10%以上を軍事費に、またその多くを海軍の増強に資しています。日本の命運を握るほどの影響力を持つに至っています。
歴史をめくると、1938年「ミュンヘン会談」はヒットラーの野心が燎原の火のように拡大しはじめた年です。ミュンヘン会談とは、1938年9月29日から1ヶ月にかけて、チェコスロバキアのズデーテン地方帰属問題を解決するためにミュンヘンにおいて開催された国際会議です。
イギリス、フランス、イタリア、ドイツの首脳が出席した。ドイツ系住民が多数を占めていたズデーテンのドイツ帰属を主張したアドルフ・ヒトラーに対して、イギリスおよびフランス政府は、これ以上の領土要求を行わないとの約束をヒトラーと交わす代償としてヒトラーの要求を全面的に認めることになったのです。
このミュンヘン協定は、後年になり第二次世界大戦勃発前の宥和政策の典型とされ、一般には強く批判されることが多いのです。つまりアドルフ・ヒトラーは、脅せば列国は従うという印象を強くしたのです。2010年尖閣諸島沖中国漁船の領海侵犯事件で、中国からの強い抗議にあって、政府は漁夫と船を、遅れて船長をも還したのは、記憶に新しいことです。宥和政策の典型です。
中国側の出方に、「理不尽」な行動と評論する日本のメディアですが、考え方の違う相手をよく観察して分析をするべきです。理不尽とは理がないということですが、「尖閣諸島中国漁船の行動は、古い(日本の)自画像を見ているようだ」と渡辺利夫拓殖大学総長は言います。
1910年韓国併合など過去には日本も膨張主義(帝国主義国家)をとっていたのです。韓国併合(かんこくへいごう、英: Japan's Annexation of Korea)とは、1910年(明治43年)8月29日、韓国併合ニ関スル条約に基づいて大日本帝国が大韓帝国を併合した事実を指す。フリー百科事典ウィキペディアから引用
これはアメリカでも、西部開拓など膨張主義は同じであります。東海岸から西海岸まで、原住民を殺戮し拡張が進み、次に南部の沖合、キューバからパナマまで拡張し、ついには大西洋国家から、パナマ運河を経て太平洋国家へ突き進むアメリカ。どの国でも拡張主義へ突き進む時代はあるのです。
ではこれから日本は、どうしたら良いのか。敗戦後から日本はアメリカ(圧倒的覇権国家)との同盟国であります。世界一の国と同盟関係にあることを、最活用するべきです。日本が第2次世界大戦に負けたことは、日英同盟の破綻によると言われています。同盟こそが重要な政治決断だと、言い切れます。
日本はイギリスと明治35年(1902年1月30日調印発効)日英同盟(~大正12年(1923年8月17日失効))を結びました。日英同盟は、日本とイギリスとの間の軍事同盟。恐露病のイギリスと利害が一致して、同盟に繋がったと言われています。共通の仮想敵国が、結びつきを強くします。
大正12年と言えば日本国内で普通選挙法が出来て、25歳以上の男子であれば、財産の有無に拘わらず投票する権利があるという世界的に民主的な制度がはじまった年です。アメリカは人種差別があたり前の頃。アメリカが民主国家であるというのはおかしい位、当時の日本は民主主義を貫いていました。
第一次世界大戦はヨーロッパが戦場でした。この間に、漁夫の利を得たアメリカと日本が台頭したのです。この前後から、日英同盟が邪魔になったアメリカは、日英同盟破棄を画策しはじめました。日英同盟はロシアの南下を恐れたイギリスの心配からはじまったものですが、もうこの頃にロシアの南下の恐れは消えていた。だからもう要らないと言うのがアメリカの主張です。
日英同盟の破棄は残念な結果になりました。皮肉なことに、そこにはアメリカの大きな力があったのです。今の日米同盟は、日本から同盟解消をしようとしているようで、残念でならない。日本はアメリカの一番のパートナーとしての責任を果たし、日米安保条約を守るべきであろう。それが日本の生きる道なのです。