2023,02,10, Friday
老朽化するマンションの増加を受け、国は建て替えのための要件緩和の法改正を検討している。建て替えに必要な賛成割合を、現在の所有者全体の5分の4以上から、4分の3かそれ以下へ緩和するなどの法改正。しかし、緩和の恩恵を受けられるはずの所有者には、これとは別の建て替え資金の問題が重くのしかかる。
所有者の負担額は、過去20年で5倍以上に膨らんでいる。人口減のなか、建て替えだけでない老朽化対策が求められるが、それとても20年を50年に伸ばす程度。いずれにしても、やがては建て替えることになる。しかし、誰1人として建て替えまで所有者として頑張ろうとは考えていない。言葉は悪いが、『売り逃げ』のタイミングを計っている。だから本気度が足りない。 従来マンションの建て替えは、それまでより建物を大きくするのが一般的だ。拡大した分を、新たな所有者に売却。そのお金を工事費に充て、既存の所有者の負担を抑えるのが基本的計画。しかし最近は、この新規拡大分が縮小傾向だ。利用できる容積率が限られるマンションが増え、駅から遠いなど不便な立地では拡大しても新規の販売が期待しにくい例が多くなっている。 東京都中央区で、年内にも建て替え決議を予定している築40年超のマンションの所有者は、「都心の好立地で戸数も現状に比べ1.5倍になるが、それでも既存の所有者には1戸あたり1000万円超の負担がかかる」と語る。10年以上前から議論し、大手不動産会社の協力も取り付けて新規の販売計画も練ったが、高騰するコストを吸収し、所有者の大半が満足できる建て替えには、相応の負担が必要のようだ。 人口が減るなか、建て替えを軸にした老朽化対策は限界に来ている。建て替えが困難なら、まず基本的な修繕を徹底することが求められる。工事費高騰の影響はもちろん修繕にも及んでおり、場合によっては工事の箇所を絞りきることも必要だろう。耐震改修工事は外せないとしても、水の浸入もどうしても防がなければ建物の躯体の損傷に繋がる。 マンションは私的財産だが、老朽化して建て替えも修繕もされずに『スラム化』すると、防犯や防災の面で周辺地域にも影響を与える。築40年以上のマンションは、今後10年ほどで約250万戸とほぼ倍増する見込みだ。規制の緩和と、強化の両面からの対策が急がれる。最低でも解体費用だけは賄える積立金を義務付けるなど、新たな規制も検討すべきだろう。 |