2023,02,04, Saturday
JALに搭乗する楽しみの一つに、浅田次郎さんの文『つばさよつばさ』があります。毎月連載の随筆ですが、プロ作家ながら見事と言わざるを得ない量と質。身近な話題をテーマに、書き上げています。233回のタイトルは、『ハッピー・ジェネレーション』。浅田氏は昭和26年東京生まれ。私の1歳先輩ですから、ほぼ同じジェネレーション(世代)です。
前々から、そうなんじゃないかと思っていた。ハッピー・ジェネレーション。1951年すなわち昭和26年生まれの私は、たぶん日本史上最高の、いやもしかしたら人類史上最高の幸福な世代なのではないか、と。確信を抱いたのはコロナ禍においてである。算え73歳、癸卯(みずのとう)の年男となるご同輩は、当然のことながらコロナが流行し始めたころには全員がリタイアしており、家で穴熊を決めこんでいても何ら問題はなかった。 そのせいか東京に住まっていながら、感染したという友人を知らない。多くの場合は配偶者との二人暮らしで、子や孫の一家とは別居している。食料の買い出し以外には、さしあたって外出の必要がない。予防医学の見地からは、圧倒的に有利な私たち。もしやハッピー・ジェネレーション。このように文は続く、がこれとても考えようで日常をポジティブにとらえていて、そのせいで全体が明るくなっている。 終盤では父親の世代を引き合いに出し、大正13年の記事を紹介している。アジア太平洋戦争を戦ったのは、恐らく大正世代である。つまりそのアンハッピー・ジェネレーションの犠牲の上に、私たちハッピー・ジェネレーションが出現したことになるのだが、学校で近現代史をきちんと教わらなかったせいで、父とそのご同輩たちの人生を、私はまったく想像することが出来なかった。 国家と社会が定めた枠の中で、国民は似たような人生を送らねばならない。その避けがたい宿命を思えば、かえすがえすも私たちは幸福な世代である。今さら何が出来るわけでもないが、せめてその自覚を持たなければ。文章は割愛させてもらっていますがわたしは、この文章を読んだのちに皇居へ行った次第です。何度か来ている皇居が、今日は輝いて見えました。日本は、すばらしい国です。 |