2022,06,13, Monday
13日の外国為替市場で円相場が一時、1ドル=135円台前半まで下落した。金融不安で『日本売り』に見舞われていた1998(平成10)年以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準に逆戻りした。当時は932日続いた自民党橋本龍太郎内閣の末期(参院選で惨敗し7月30日小渕恵三内閣誕生)で、8月ロシア財政危機勃発などから1ドル=147円64銭をつけていた。円安を招く構造は、当時と様変わりしている。
今回の円安は、産業競争力を底上げしてこなかった日本経済のもろさが露呈した結果だと思う。過去には半導体は日本が生産一、コンピュータなどのIT・デジタル器具も日本が優れていた。しかし今では半導体生産は、台湾積体電路製造(TSMC)にその座を奪われ、韓国にも劣っている。それでも専門家に言わせれば、半導体製造ラインは『日本製』が現在でも圧倒しているという。 欧米でインフレが加速し、米連邦準備理事会(FOMC)や欧州中央銀行(ECB)が金融引き締めを急ぐ一方、金融緩和を続ける日銀との差が一段と鮮明になった。海外と日本の金利差がさらに広がるとの見方から、海外ヘッジファンド(リスクを回避しながら収益を得ることを目的とする大口の投資信託。)などの円売りが勢いづいた。 1998年当時は、10月に日本長期信用銀行(現新生銀行)が破綻し一時国有化(23日)、金融危機下の日本売りが激しかった頃だ。97年頃から相次いだ金融機関の破綻の連鎖はなお止まらず、経済がデフレ局面の入口にたち、企業は投資を絞り、賃金抑制も始まりつつあった。今の円安構造とは、明らかに違うと私も思う。かと言って、手放しで『好き勝手』とは言い難い。 旧大蔵省(現財務省)は98年4~6月に、計3兆円を超す円買い・ドル売り介入で異例の通貨防衛に動いた。それでも円は8月に一時147円64銭まで売られた。なお同じ8月末に、北朝鮮は日本列島を通過して太平洋に落下したロケット『テポドン』を打上げた。弱っている時に畳みかける戦略は、今も昔も変わらないが、今のようなロシアのウクライナ侵攻は勿論なかった。 現在、金融システムは強さを保ち金融不安に根ざす日本売りは見られない。一方でエネルギー価格が急騰するなかの円安は『輸入インフレ』に拍車をかけ、家計や企業を苦しめる。日銀の黒田東彦総裁は13日、急激な円安を『経済にマイナスで望ましくない』と述べている。繰り返すが根本的な問題は、円安を生かすための産業競争力が失われている点だろう。 |