2022,01,22, Saturday
聞き慣れない固有名詞だが、不動産業界の新春テレビセミナーでの話しです。『不動産流通業はESGという潮流にどのように向き合うべきか』ザイマックス不動産総合研究所・大西順一郎氏の講座。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉です。
ESGでは、さまざまな社会問題に対し、企業がリスクを認識した上でどのような戦略によって取り組んでいくかが問われているともいえます。例えば、自動車メーカーがCO2削減のために電気自動車開発に注力するといった取り組みは、企業が持つ技術やノウハウを活用した解決方法です。 気候変動問題や人権問題などの世界的な社会課題が顕在化している中、企業が長期的成長を目指す上で重視すべきESGの観点での配慮ができていない企業は、投資家などから企業価値毀損のリスクを抱えているとみなされます。そのため、ESGに配慮した取り組みを行うことは、長期的な成長を支える経営基盤の強化につながると考えられています。 ESGが重視されるようになった背景には、経済活動が発展していく一方で、『環境・社会・企業統治』の面で『持続可能性』について懸念されるようになったことが挙げられます。利益追求型の企業活動では、短期的に利益を上げることはできても、社会への悪影響が生じれば持続的な成長は見込めません。このことから、持続可能な成長を望む上では、ステークホルダーへの配慮としてESGの観点が重要であるという認識が広がりました。 またリーマン・ショックなど、投資に対する短期的なリターンの追求がグローバルな金融危機を引き起こした反省などから、短期的な利益追求の側面からの企業の評価方法を転換し、気候変動や世界的な労働環境の変化などのリスク対応を含めて、企業の長期的な持続可能性を評価する投資が求められています。 そして『ESG投資』とは、「ESGに配慮した企業に対して投資を行うこと」です。2018年における世界のESG投資額は、3100兆円で世界の投資額の3分の1を占めています。ESGが投資で重視されるようになった背景に、国連が2006年に「責任投資原則(PRI)」を提唱したことが挙げられます。2015年には日本の『年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)』もPRIに署名し、それ以降、国内においてもESG投資が進んでいます。日本におけるESG投資額は336兆円ですが、前年比45%増で伸びています。 さらにJFEホールディングスは、事業モデルを脱炭素に転換するための『移行債』を2022年に発行するという。調達する300億円は、省エネルギー技術の開発などに使う。移行債の発行は、国内製造業で初めて。二酸化炭素を大量に出す企業は、環境対策のための資金調達手段として、一般的な環境債の発行が難しかった。日銀がESG(環境・社会・企業統治)関連の投融資をする金融機関に対して、金利ゼロ%で長期資金を供給する『気候変動対応オペ』の対象にも移行金融が含まれる。 確かにESGやSDGs(持続可能な開発目標)、環境、脱炭素、グリーン、これらのフレーズをニュースで見ない日はありません。私の好きなテレビ東京の『ガイアの夜明け』でも、脱炭素発電の電力を使っているファーストフーズ店の商品が、『美味しそう』と言われてよく売れているという。その先で、兵庫県下のため池を使った太陽光発電計画も紹介されていた。 太陽光発電で24時間安定した電力の供給が出来るのか、初心者レベルの知識しか持ち合わせていない私には、太陽光発電の電力が将来へ向けて安定供給が出来るのかよく分かっていない。そこにバッテリーなどの蓄電池装置が介在すれば、24時間供給も不思議ではないのだが、どうなんだろう。この問題はまた別の機会に譲るとして、本題に戻る。 視点は類似しているが、兵庫県のため池利用の太陽光発電計画は、香川県下でもすでに行われ始めている。池の維持補修等のためには、多額の費用がかかる。それを釣り堀利用料で賄ったり、ゴルフの練習場に使ったりしているのはよく目にする。太陽光発電用パネルをそこに浮かべても、藻の発生をおさえる等プラス効果は言われているが、マイナスになることはさほどないのでは無いか。水面からの冷却効果もあり、発電効率が良いと聞く。 世界でESG投資がますます活発になっているものの、いまだESGには標準的な定義が存在していない。環境(Environment)では、地球温暖化対策や生物多様性の保護などが注目され、社会(Social)では、サプライチェーン上の人権やジェンダー平等といった問題が焦点になる。ガバナンス(Governance)では、法令順守や情報開示などが取り上げられている。だが、具体的にどういった点が詳細にチェックされるかは評価機関側の判断であり、共通の判断基準はない。 ESGは非財務の情報でありながら、企業へ投資する際に活用され、より良い経営をしている企業を表す指標という見方がされています。従来、企業価値を測る方法は業績や財務状況の分析が主流でした。しかし、企業の安定的かつ長期的な成長には、環境や社会問題への取り組み、ガバナンス(企業統治)が少なからず影響しているという考えが広まり、ESG投資が世界的な潮流となっています。 現状の財務状況だけでは見えにくい将来の企業価値を見通す上で、ESGの重要性が認識されていると言えます。では『不動産ビジネスにESGの要素を組み込む』とは、どういうことか。例えば不動産の開発というメイン事業をベースにしながら、ESG要素を追加的に加える。市場での役割に、ほんの少しESG要素をプラスすれば良い。かつての耐震性、OAフロア、個別空調、機械警備、フリーレントに加えて、不動産市場のESGの浸透が求められています。 何だかよく分かりかねるのだが、これまで以上に需要者側(テナント入居者)は環境だけでなく、ウエルネス(健康性・快適性)等にもプレミアムをつける。従って供給者側はESGを加えることで、賃料も高く設定出来、売る値も高くなる傾向が見受けられるようになるだろう。一方的な負荷負担ではなく、それに見合うリターンも得られることから、この傾向は22年の流行に終わらず、持続可能なSDGs達成につながると言えそうだ。 |