2021,12,29, Wednesday
法務省は、所有者の不明な土地に隣接する不動産売買をしやすくする。取引時に必要な、隣接地との境界確定の手続きで、地主の承諾書類の提出要件を緩和する。所有者不明の土地が増えるのを見据えて、土地取引の滞りを防ぐのが目的。2022年度にも、適用を始めると急いでいる。実務者として、良いことだと手放しで喜び、実現を心待ちにする。
所有者が土地を売却したり分割したりする場合、隣接地の地主と『筆界確認書』と呼ぶ土地の境界を確認する書類を取りかわすのが一般的だと報道には書いているが、分割にはどうしても必要だが、売却時はそこまでは求められていない。『境界を明示して』とあるだけで、売主が「ここだ」と明示すれば足りることになっている。 しかし実務では、隣接する地主の署名や記名、押印が求められる。私も不動産仲介業に携わり、来年で40年になる。ここ数年は、売却時の媒介契約(売ること買うことの依頼を媒介(仲介)業者と書面で契約)で、『境界確認』を土地家屋調査士(測量等の専門(国家)資格者)に依頼して、確定し、現場に境界杭等を入れる作業費を事前に売主に説明し、了解を得ている。 話しは報道から逸れるのですが、この場合でも、その敷地が公道『国道・県道・市道・町道等』に面している場合、この部分の確認を省略しています。理由は、私有地のように揉めることが少なく、かつ事前に用意する資料が膨大で、経費がかさむことによります。土地家屋調査士会に依頼し、この部分の負担軽減化をお願いしたのですが、宅建副会長の意見は聞き入れてもらえませんでした。 法務省は22年度にも、境界確認書を不要にする事例の指針を作り、全国の法務局に通知する方針のようだ。分筆などの測量の場合には、どうしても隣接者の同意を要するのだが、この部分の緩和と考えられる。売却の場合の隣接者同意は、「くれなければもらわない」方針。昨今考え方が真っ直ぐな人がいて、あいつ(あの家)が得するのには一切協力しないという頑固一徹の隣人もいる。 こんな場合は、「確認出来なくても契約は有効」として、話を進める。先のように取得後分筆を伴うような大規模土地では契約解除もありえるのですが、一般的な住宅物件では契約解除とはしていません。いずれにしても法務局の『境界確認』要件が緩和されることは、ありがたい。よくよく考えてみれば、所有権の横暴は公益性も加味して判断願いたいものだ。 これまで法務局では確認書の提出が受けられない場合、専門家が現地を調査する『筆界特定制度』を利用してきた。土地の境界を巡るトラブルが起きた時のための制度で、費用に加え手続きに時間がかかるという課題があった。トラブっているから『筆界特定制度』を利用するのだが、抜本的解決には至っていない。相続に伴い土地の所有関係が複雑になり、所有者のわからない土地が増えている。 |