2021,04,07, Wednesday
プラント大手の日揮ホールディングス(HD)は、安全性に配慮した次世代の原子力発電所建設プロジェクトに参加すると報道されている。これからかと驚いたが、米新興企業が開発した小型原子炉を使い、2020年代末の商業運転を目指すという。世界的に脱炭素への対応が急務となるなか、温暖化ガス排出抑制につながる小型原子炉を、選択肢の一つとする気運が高まってきた。
従来の出力100万キロワット超の原子力発電所と異なり、1基あたりの出力が小さな原子炉。大型の原子炉比べていざというとき冷却しやすく、安全性が高いとされている。2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故をきっかけに、欧米を中心に『原発離れ』の機運が進んでいる。しかしここへ来て、脱炭素の動きが高まる中、温暖化ガスをほぼ出さず、大型炉よりも安全で低コストの小型炉に注目が集まるという。 にわかに信じられない話だが、日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の原子力合弁会社や、米ニュースケール・パワーなどが開発を進める。英ロールス・ロイスも、実用化に向け、英国政府も支援するようだ。その他も韓国・中国ロシアは、国を挙げて開発を支援している。時代に逆行していると思うが、小型原子炉≦脱炭素の関係が成り立つ。何をおいても『脱炭素』と、米国を含めて世界が考え始めている。 勿論課題も多い。大型炉に比べて参入障壁が低く、核拡散のリスクは高まる。使用済み燃料を、どう処理するかも明確に定まっていない。処分方法などの技術を確立し、廃炉までの行程表を定めることも、普及には欠かせない問題だと素人目にも映る。これから先は何でも、作るときに壊すときの問題を解決せずには、取り組めない。 日揮HDが参加するのは、「小型モジュール炉」と呼ばれる原子炉を使う発電所の建設。米新興企業のニュースケール・パワーが開発し、他社に先駆けて20年夏に、米規制機関の技術的な審査が終わっているという。複数の原子炉を、まるごとプールに沈めて冷却するらしい。米ニュースケール・パワーの方式は、冷却水の供給が止まっても、プールの水がすべて蒸発するまでに1カ月かかるという。その間に熱が下がり、炉心溶融(メルトダウン)につながりにくくしている。 従来の100万キロワットの大型原発は、建設に1兆円以上かかる。ニュースケールの小型原子炉を使う場合、90万キロワット超の発電所で3,000億円程度に抑えられるという。米政府は、小型原子炉の研究開発を後押し。日本政府も20年の『グリーン成長戦略』で小型原子炉について、「海外での実証プロジェクトと連携した日本企業の取り組みを、積極的に支援する」とした。 またも原子力発電の世界でも、常識が非常識になりつつある。 |