2020,04,11, Saturday
「お値段以上ニトリ」でお馴染みのニトリホールディング(HD)が、デジタル技術で事業を変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を急いでいる。物流子会社で、今秋にもブロックチェーン(分散型台帳)を使った新システムを稼働させ、外部受託を2030年までに数百億円事業に育てる計画だ。電子商取引(EC)サイトの運営ノウハウを、クラウドサービスとして事業化した米アマゾン・ドット・コムのように、ニトリは家具の王者から物流の「プラットフォーマー」へ軸足を広げる。
変革を主導するのが、ニトリホールディング(HD)傘下の物流事業会社「ホームロジステック」。約150の中小運送会社と委託契約をし、商品の宅配や全国約550店舗への搬入を担う。同社は、秋にもブロックチェーンを利用した、新たな物流システムを稼働させる。人工知能(AI)による配送ルート策定や、在庫管理の高度化など約500の機能も開発し、運送会社へ導入を促す。 開発費は数億円と、グループ全体の事業規模からすれば小さい。だがこの取り組みからは、ニトリが目指す「DX」の一端が見えてくる。ブロックチェーンを採用した狙いは3つある。 ①紙伝票の撤廃 ②運送会社ごとの得意技の共有 ③積載率の向上 提携する運送会社の多くは中小企業で、受発注のやり取りでは、電話やFAXを使うことが多い。ブロックチェーンの特徴は、いったん登録された情報は、事実上改ざんできない。だから、政府よりも信用できる。契約や決算情報をブロックチェーンで管理すれば、中小事業者でも正確な取引履歴を保存できることになる。末端まで正確な情報が届けられれば、確認の手間も省ける。 また提携運送会社のドライバーが、どんなスキルを持っているか把握しきれないため、エアコンなど専門知識が必要な商品を配送するのが難しかった。ニトリの強みは、大型家具などを二人で配送する「ツーマン輸送」にある。宅内に入り込んで、家具の配置まで手がける。運転手もこれからは、ドライバー役だけでは務まらなくなってきている。生きるためには、「生産性の向上しかな」。この持論は、また別の機会に展開したい。 ブロックチェーンに、提携先ドライバーの得意技(電気工事が出来てエアコンの取り付けが可とか)を登録してもらい、最適な人員配置を目指す考えだ。3番目の積載率の向上は、東京から大阪まで荷物を運んだトラックが、空荷で帰ってくるのは勿体ない。ブロックチェーンを使って、トラックの現在位置や作業内容を追跡し、機動的に発注出来る仕組みを整える考えだ。他社の荷物も共同輸送して、積載率を高めるという。 私もかつては、アマゾン・ドット・コムは「本」を売る通販と認識していた。それが今では、何でも揃うと聞いた。だからこそニトリは、DXを加速する。「ホームロジステック」にデジタル技術を投入し、新たな売上を稼ぐ事業に変貌させれば、家具販売に次ぐ柱を育成できる。DX(デジタルトランスフォーメーション)は将来、ニトリの業態すら変えてしまうかも知れない。 |