2020,04,07, Tuesday
今夏の土用の丑(うし)の日のウナギ(これを言い出したのは讃岐の偉人・平賀源内と言われている)は、前年より安くなりそうだ。今年は稚魚の漁獲量が4倍あって、半値になると予想されている。ニホンウナギの稚魚であるシラスウナギが、豊漁のためだ。そのシラスウナギは、日本から遠く2千キロ離れたマリアナ諸島付近の海域で産まれ、海流に乗って東南アジアへ来る。従って今年は、日本に限らず東南アジア全域で豊漁だ。
食卓に上がるウナギの9割は、養殖物だと聞く。12月から翌春にかけて、海や川にいる稚魚を捕獲し、養殖場で半年ほど太らせて出荷する。過去最低の不漁だった前年に比べ、今季の国内の稚魚の漁獲量は、約4倍に増え、取引価格は半値ほどに下がっている。国内の養殖場は稚魚で満杯になり、例年の4月上旬より早く、3月末で今季の漁が終わった。 ウナギの産地、静岡県の3月末までの漁獲量は1,638キロ。不漁だった前年同期の、3.5倍にあたる。高知県の漁獲量も、前年の約5倍だ。高知県では、資源管理のために定めている漁獲上限に達し、1ヶ月ほど早く漁を終えた。そして稚魚の豊漁で、取引価格も下がった。 前年まで2年連続で、平均1キロ200万円を超え、ウナギ価格の高騰につながっていたが、今季の平均価格は前年の半額ほどに下がったようだ。前年の5.4倍の約740キロがとれた鹿児島県では、稚魚の取引価格が月を追って下落。漁序盤の12月の1キロ110万円が、1月には60万円、2月には35万円に下がった。全国ベースでみても、3月取引価格は30万円前後と、前年同月の8分の1だ。 稚魚価格に、養殖するためのえさ代や燃料費が上乗せされるが、それでも今夏の小売価格は確実に安くなる見通しであります。日本で消費するウナギの半分近くが、中国産。専門店で使う生きたウナギや、回転寿司やスーパーに並ぶ蒲焼きとして多く輸入する。前年までは不漁で、在庫が枯渇していたが、豊漁を受け「今後3年間は、蒲焼きの供給に不安はない」との声もある。 今年の土用の丑の日は、7月21日(火)。この頃までには新型コロナウィルスも国内で治まり、ウナギを食べながらビールで乾杯できるでしょう。ある大手量販店は、国産蒲焼きを前年より2割安い1,800~1,900円、中国産は2~3割安の1,000円未満での販売を計画しているという。 今季ウナギの幼魚が増えた理由について、水産海洋学が専門の東京大学木村伸吾教授は、「明確には分からない」と話す。乱獲や河川が住みにくくなったことで、ウナギが減ったのは確実。だが「潮流など海の複合的な環境変化によって、日本の沿岸に来る量も増えることもある。元々年変動が大きい」と指摘する。 今年は増えたからといって「親ウナギを守り、稚魚を捕りすぎないなど、資源管理の手を緩めては決してならない」と強調する。現代の科学をもってしても、「ウナギ」はまだまだ謎の多い獲物であります。これまた、美味しいんだなこれが。 |