東京電力福島第一原子力発電所事故から8年、廃炉の最終形が見えない。日本原子力学会は2019年夏頃にも、将来の廃炉像に関する報告書をまとめると言われている。政府と東電がまとめた行程表では、事故後30~40年で廃炉を終えるとされているが、核燃料(デブリ)の取り出しを始める21年から廃炉完了まで、具体的な工程はなく、ほぼ白紙の状態だ。
敷地内の除染は進み、大半で全面マスクや防護服は不要になった。だが、原子炉建屋は依然として放射線量が高く、作業を阻む。最大の難関であるデブリは2月に遠隔装置で接触調査した段階で、取り出し法の選定などはこれからだ。3月18日(月)の日本経済新聞と、3月19日(火)四国新聞こどもニュースから拾っています。
海外で、事故を起こした原子力施設の廃止は様々だ。1986年今から33年前になるが、原子炉が爆発して建屋が吹き飛んだチェルノブイリ原発事故では、デブリの取り出しを諦め、コンクリートで覆う「石棺」と呼ぶ方法を選んだ。57年今から62年前大量の放射性物質が漏れた英国のウィンズケール(現セラフィールド)原子力施設は、放射線量が下がるまで待ってから施設を解体、廃炉完了は100年後の予定だ。
廃炉の進め方によって、費用は大きく変わる。民間シンクタンクの日本経済研究センターの試算によると、デブリの取り出しを先送りすることで、廃炉や賠償など事故対応の費用は2050年までに35兆円になる。その場合、石棺によってデブリや建屋を覆う。汚染水から放射性物質を完全に取り除く場合、80兆円に膨らむ可能性がある。
デブリは1~3号機を合わせて880トンあるとみられ、安全に取り出す方法の開発や保管場所を見つけるのが大きな課題です。内部に水が貯まっている3号機では2017年、水中を進むロボットがデブリとみられる岩のようなかたまりを撮影していますが、1号機ではまだデブリを直接確認できていない。
国と東電の計画では、19年度後半に2号機から少量のデブリを採取。本格的取り出しを、21年にも始める計画になっている。それでもデブリの取り出しは、困難を極める。水素爆発が起きなかった2号機は、1,3号機と比べて建物の被害や汚染が軽く、調査も先行しているので、デブリの取り出しが最初に始まる候補です。
今後、廃炉作業に伴って出た廃棄物の処分問題も浮上しそうだ。専門家は、88万トンの放射性廃棄物が生じると試算している。国と東電は、困難な問題に曖昧な姿勢を続けてきた。先送りすれば廃炉が長引き、費用高騰と国民負担の増大につながりかねない。最終的には、どのような形で廃炉を終えるのか。地域社会や環境への影響、技術的な選択肢など広く国民に示し、議論すべき時期に来ていると素人目にも思う。