2019,01,24, Thursday
またまた、日本経済新聞1月23日朝刊からのネタです。米国が、世界の企業業績を牽引しているという「まさか」から、読者の視線を釘付けにする。2018年度は、世界の純利益の4割を米企業が稼ぐ見込み。デジタル化への集中投資で、世界は、知的財産などの「見得ぬ資産」が利益を生む産業構造に転換した。
米国の純利益は10年間で、3.8倍に増える。(製造業中心の)日本は成長が足踏みし、資産効率でも世界に後れを取っている。実に気の遠くなる数字であるが、18年度の世界企業の売上高は35兆ドル(約3800兆円)と10年前より19%増だが、純利益は2.5倍の2.8兆ドルと大幅な増加になる。米国の急成長が要因で、純利益で見ると10年前に25%だった米国の「世界シェア」は、39%へと高まる。 米国の成長を支えるのは、製造業や小売りなど現実のモノを扱う産業から、知識集約型産業への転換だ。米国企業の持つ資産を調べると、技術力を示す特許やブランド力を示す商標権といった無形資産が4.4兆ドルと、10年前の2倍以上に増えた。工場や店舗などの有形資産を、17年に上回っている。どうやって無形資産価値を計算するのか、そこには触れられていない。 ある企業は、航空機部品などモノの供給から気象予報のソフト、航空機監視といったサービスの提供者へと変わる。製造業から、デジタル事業者への移行だ。無形資産を活用するデジタル産業は、工場や店舗で必要だった人件費や在庫のコストがかからない。形を持たない商品は世界展開もしやすく、米S&P500種株価指数の「情報テクノロジー」を構成する企業は、海外売上高が6割に達する。 私なども使っている、画像処理ソフト「フォトショップ」で知られるアドビ(社)は、売上高に占める純利益の比率が約30%と5年前の4倍に上昇した。ネットを通じてソフトを提供、定額料金を受けとるモデルに転換し、IT(情報技術)の老舗企業がふたたび成長している。売り方を今風に変えただけと言ったら、言い過ぎか。 販売量に応じて増えるコストが、原材料費などの変動費だ。デジタル産業は製造業に比べて、変動費が抑えられるため、売上高が増えれば利益率が向上しやすい。米国企業の純利益率は、18年度初めて9%に達する見込み。 1月7日、先の小欄で田中道昭氏の講演でも話に出た、米ラスベガスでの「Consumer electronics show=CES」で、ソニーの社長は音楽プロデューサーと肩を組み、音楽や映画などコンテンツ事業を紹介した。今期計画の営業利益は8700億円と過去最高で、7割近くをゲームと音楽・映画が占める。テレビやカメラなど、ハードで稼ぐソニーは過去の姿。 パソコンや携帯電話を次々と切り離した富士通の社長は、「もはや製造業ではない」と話し、「モノではなくヒトが稼いだ価値が利益になる」と強調する。日本企業の無形資産は約50兆円。総資産の6.4%で米国の26%には遠く及ばないが、10年間で2.2倍に増えた。 米国は、製造業から金融業、そして知識集約型産業への収益転換だ。トヨタ自動車は、米ウーバーテクノロジーズなどと協業を通じて移動サービスの提供会社へ変わろうとしている。産業構造の変化に取り残されたら、トヨタでさえ安泰ではない。何が何だか全く分からない、まさにカオスの世界へ突入した感がする。 米国は知識集約型産業へのダッシュで、中国へ強い警告を送っている。知的資産に対する中国の認識は、最下位後進国ほどしかない。俗に言う、「パクリ文化が跋扈」する中国の実態にである。知的財産という価値が定着する世界、やはり中国がどう変わるか注目だ。 ラスベガスでのCES |