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日経新聞13面経済教室欄「日本の住宅市場の特異性㊦」
10月29日(月)朝刊13頁経済教室欄に、ペンシルベニア州立大学准教授吉田二郎氏が書いた、日本の住宅市場の特異性を「使い捨て」の悪環境脱却をと題して書いた論文が掲載されている。ポイントにまとめられているように、(1)日本の建物価値は米国よりも急速に喪失(2)背景に生活様式の変化や耐震技術の進歩(3)建物状況調査を標準化し売買時に公表を、その通りだと現場を知る私は思う。

(1)で筆者の推計値だが、戸建て住宅の建物部分の平均経年減価率は東京で年5.8%、東京以外で6.7%。築後20年を経ても25~30%の建物価値は残る計算で、95%が失われるまで40~50年かかる。ただこの減価率は、米国の1.8%に比べれば圧倒的に大きい。米国では建物価値の95%が失われるまで、165年かかる計算になる。

さらに日本の商業用建物の減価率は、住宅よりもさらに大きく、東京で10.8%、東京以外で9.8%に達する。建物価値の95%が失われるのに30年もかからない計算になる。米国の商業用建物の減価率は、用途により0.4~3.4%なので、やはり日本の大きな減価率が際立つ。

日本の建物が使い捨てと言われてもしかたがない状況だが、なぜだろうか。よく耳にするのが、日本の建物は木造で、石やレンガで出てきている「欧米」とは違うという話しだが、しかし米国の住宅はほとんどが木造で、それでも経年減価率は低い。私も若い頃、ナイアガラの滝付近の住宅新築団地を見学したことがある。確かに外見は洋風仕上げだったが、躯体は間違いなく木造だった。

また日本は高温多湿で、木造建物の物理的寿命はどうしても短くなると言うのもよく聞く理由だ。しかし年間平均湿度は東京の62%、大阪の65%に対し、より気温の高いアトランタは67%、ニューオリンズとヒューストンでは74%に達する。しかしこれらの都市でも、日本のように建て替えが頻繁なわけではない。これもあたらない。

さらに日本では建物の法定耐用年数が木造住宅で22年なので、人の認識もそれに引きずられている、という理由も眉唾ものだ。米国の賃貸住宅の法定耐用年数は27.5年で、日本の年数と大差ない。では、より妥当な理由は何か。第一は、戦後の急速な生活スタイルの変化だ。この70年の間に、トイレとか風呂とか台所とか日本の住宅環境は変わったけれど、欧米では戦前から下水道も整備されていた。

第二が、耐震技術の進歩の早さだ。日本では10~20年に一度、大地震に伴って建築基準法の耐震基準が改正されてきた。十勝沖地震後の1971(昭和46)年の改正、宮城県沖地震後の81(昭和56)年の改正(新耐震基準の導入)、阪神大震災後の2000(平成12)年の改正など。耐震基準を強化すれば、建築物の多くが「既存不適格建築物」となる。耐震改修工事をするなら一層、建て替えようとなる。

国土交通省によると、08年に耐震性のなかった住宅の内、5年間で改修されたものが25万戸に対して、建て替えられたものは約4倍の105万戸であった。このように日本の不動産市場は、「悪い均衡」に陥っている。当然この逆になっている建物は、「良い均衡」で、建物の所有者が十分に維持管理し、長期間使用する。

品質を維持する改修が不足した物件が売りに出ていること(逆選択)を懸念して、買手は中古物件を敬遠するか、将来の改修・建て替え費用を織り込んで大きく値引いて購入しようとする。高値での売却が無理なのを見越して、所有者は必要な維持管理をしないで、売り逃げようとする。雨漏り箇所やシロアリがいたとしても、告知しただけで修理まではしない。

どうすれば、悪い均衡から抜け出すことが出来るのだろうか。標準的経済学が示すのは、まず売り手が品質に関して信用に足るシグナルを出すことが求められる。2018年4月から、中古住宅の劣化や不具合を調べる「建物現況調査」が始まっている。調査自体が義務化されたわけではないが、宅建業者が「売り注文」を貰う歳に、「インスペクションと呼ばれる「建物目視検査」をしますか?」と売主へ尋ねる。

相続で取得した実家ともなれば、18歳で家を出て50年、建物の現況は分かるまい。専門家が検査をして、検査書を作ってくれるのは媒介業者としてもありがたい。私も平成24年度国土交通省「中古不動産流通市場の活性化に関する調査検討業務」から4年間、インスペクションと呼ばれる「建物目視検査」制度を軌道に乗せる一役を担った。

さらに米国で行われているように、過去の維持管理、改修の契約記録を保存しておくのも有効だ。不動産登記から維持管理記録まで、すべて電子的にブロックチェーン(分散型台帳)化し、公開していくのが良い。現在のように100%理想的な改築か、逆に何もしないかの選択ではなく、0~100%の間で連続的に改修の課程を選択し、その結果が価格に反映されるようにすれば、全体としてストックの耐震化と品質向上が進み、市場の流動性も高まる。それが、不動産の使い捨てから脱却するための道筋だろう。


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| 社長日記 | 06:43 AM | comments (0) | trackback (0) |
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